「寄せ書き日の丸」返還運動が拓く日米の未来 米国から日本の遺族へ、「旗への思い」共有

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思いがけない「カナダからの遺品返還」から約2年、2009年からジーク夫妻の旗の返還活動は始まった。旗にまつわる「真実」の物語を伝え歩くと、アメリカ全土から多くの旗が夫妻の手元に集まった。

しかし、一方でこの旗の意味を知らないままに、あたかも切手やコインのコレクションのごとく「eBay」などのオークションサイトを通じて、毎年何千もの日の丸が、売買されているのも事実である。

当時の兵士たちの多くが、まだまだこの寄せ書き日の丸を保有していると思われるが、彼らのほとんどは高齢であり、すでに他界している元兵士も非常に多くなっている。

アメリカ全土から、夫妻のもとには多くの「寄せ書き日の丸」が寄せられている

アメリカだけでなく世界全体でみれば、恐らくおびただしい数の旗が、世界のどこかで眠っている可能性があるという。だが、旗を探し出すことが年々困難になることは予測できる。だからこそ、一日も早く、そして一つでも多く旗を探し出し、日本の遺族に届けたい――それがジーク夫妻の願いだ。

「旗を返還すると、遺族の方々は必ずといっていいほど、『ようやく愛する人が戻ってきた』とおっしゃいます。旗は家族にとっては、ある日突然何の痕跡もなくこの世から消えてしまった、愛する人の魂そのものなのです」。

これからの「戦後」とは何か

今年4月に行われた米上下院両院合同会議において、安倍晋三首相が日本の総理大臣として初めて演説を行ったことは記憶に新しい。そこで安倍首相は、日米を「希望の同盟」という言葉でくくり、日米同盟の発展が、世界の平和と安定に貢献するという考えを語った。戦後、かつて敵国であったアメリカは、今や日本にとっての重要な「友好国」であることは言うまでもない。

「新しい時代の友好を目指す」という願いを込めて、ジーク夫妻は今年8月4日、アメリカから7人の退役軍人を引き連れ、安倍首相やケネディ駐日アメリカ大使などと会うことになった。当初は戦後70周年ということで、70枚の旗の収拾を目標にしたが、それをはるかに超える100枚以上の旗が手元にすでに集まっている。

ジーク夫妻は言う。「この活動を始めて以来、個人のボランティアをはじめ、政府も軍関係者などさまざまな方々が惜しみない協力をして下さいました。立場は違えども、日本兵の魂を家族の元へ届けたいという願いはみな一緒です。私たちは違う国に住んでいますが、私たちはみな同じ人間なのです。戦争が起こったことは変えられませんが、これから両国をもっと強い絆で結びつけるために出来ることは沢山あるのだと、私たちは信じたいのです」。

中津川 茜 フリーライター、翻訳家

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なかつがわ せん / Sen Nakatsugawa

中津川 茜(なかつがわ せん)
神奈川県横浜市出身。アメリカ留学中にインターンとしてライターになる。
以来、アーティストからビジネスパーソン、アスリートなど、多様な分野におけるインタビュー記事や著作ライティング、翻訳などを手掛けている。
最新翻訳作品はカイゾン・コーテ著『ペンタゴン式目標達成の技術』(幻冬舎刊)
 

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