「向上心」と「怠け心」どちらが人間の自然な姿か 何を「サボること」に魅力を感じるか実験で検証
この結果から、人間はできることなら努力したくない生き物だといえるのかもしれません。もしそうであるならば、「ラクにしてあげる」介入、つまり選択や行動にかかるコストを最小化してあげるような介入は、効果的に働く可能性があります。
この性質をうまく利用しているのが「ナッジ」です。
今回紹介した実験のように、選択の余地は残したまま、望ましい選択に誘導するという介入の仕方は「ナッジ」と呼ばれています。「ナッジ」とは「ひじでそっとつつく」という意味で、強制するのではなく、よりよい選択肢を「ナッジ」して気付かせてあげようという発想に基づいています。
強制せずに人を動かす
ナッジは2017年にリチャード・セイラー教授がノーベル経済学賞を受賞して以降、政府や自治体・企業の取り組みとして注目を集めてきました。
「ナッジ」の文字は、新型コロナウイルス感染症対策に関するニュースで目にした人も多いかもしれません。
例えばスーパーのレジ前に、少し広めに間隔を開けて人の足形の表示がされているのを見たことがある人もいるでしょう。何か指示されなくても、地面に足形が表示されていれば、それに合わせてついつい立ち止まってしまう。
このような、強制ではなく人と人との距離を生み出す仕組みは一時期話題になりました。
他にも、ホテルで連泊する際に「80%のお客様がシーツとタオルを再利用してくださっています」のような案内を見たことはないでしょうか。
この案内を見ても「絶対に再利用しなければいけない」と強制された感じはせず、「そんなにたくさんの人が再利用しているのなら、自分もしてもいいかな」とシーツとタオルの再利用に自然に同意する人が多いと思います。
これもナッジの1つで、「社会規範(記述的規範)」を用いて望ましい行動に誘導しようとするものです。
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