なぜ彼女は「ジョブズ再来」と絶賛されるのか ヘルスケア革命を率いる女性起業家の正体

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検査も従来のように太い注射針を使って採血管何本もの血液を採るのではなく、小さな針で指先を刺して一滴採るだけでことが足りる。器具代も人件費もラボでの分析費用もすべて抑えられるため、安価な検査を提供できるというわけだ。

実際、同社のホームページの料金表を見ると、その安さに驚く。たとえば、総タンパク値を調べる血液検査が2.52ドル(約310円)、コレステロール値を調べる血液検査が2.99ドル(約360円)といった具合だ。

タートルネックは150枚所有

同社は10年以上の研究開発の末、昨秋米ドラッグストア最大手ウォルグリーンと提携し、アリゾナ州やカリフォルニア州の約40カ所のドラッグストアで検査を開始。今後、全米1000カ所で同様のサービスを提供したいとしている。

ちなみに、これまでドラッグストアでの検査にも医者の許可が必要だったアリゾナ州では今年7月、新法が誕生。個人の意思で検査ができるようになった(英『エコノミスト』誌6月27日号)。ホームズ氏は、医療産業に変革をもたらし、法律にも影響力を及ぼしているのである。

「一滴の血液」で検査ができるという、同社の検査方法や正確性などに疑問を投げかける既存企業や医者も少なからずいる。が、一方で米製薬大手や米軍もセラノスのクライアントだったりと、賛否両論を含めて同社への関心は高まるばかりだ。

「まだ歴史の浅い会社だが、ほかのベンチャーも併せ、今後数年で、ハイテクを駆使した『ヘルスケア革命』が起こるだろう。そうすれば、誰もが健康で長生きできるようになる」と、ワドワー氏は期待を寄せる。

米女性誌のインタビューで、黒いタートルネックを150枚は持っていると答えたホームズ氏。大好きな仕事に集中するために、服選びには時間をかけないという。同氏のファッションは、IT業界の人にはジョブズ、ファッション業界の人にはオードリー・ヘブバーンを連想させると、アメリカのあるファッション専門家は言う。

いずれもそれぞれの業界に新しい風を吹かせた人物だ。有能さと優雅さを併せ持った若手女性起業家は果たして、米医療業界の革命児となるだろうか。

肥田 美佐子 ニューヨーク在住ジャーナリスト

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ひだ みさこ / Misako Hida

東京都出身。『ニューズウィーク日本版』編集などを経て、単身ニューヨークに移住。アメリカのメディア系企業などに勤務後、独立。アメリカの経済問題や大統領選を取材。ジョセフ・E・スティグリッツなどのノーベル賞受賞経済学者、「破壊的イノベーション」のクレイトン・M・クリステンセン、ベストセラー作家・ジャーナリストのマルコム・グラッドウェルやマイケル・ルイス、ビリオネア起業家のトーマス・M・シーベル、ジム・オニール元ゴールドマン・サックス・アセット・マネジメント会長(英国)など、欧米識者への取材多数。(連絡先:info@misakohida.com)

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