逆ザヤ販売でも儲かる、アマゾン「キンドル・ファイヤ」がアップルの強敵に
9月28日に画面サイズ7インチのタブレット端末「Kindle Fire(キンドル・ファイヤ)」を発表したアマゾン・コム。11月15日発送に向け当日から受付を開始したが(販売は米国内のみ)、衝撃的なのは、なんといってもその安さだ。
カメラがない、メモリの容量が小さい、3G携帯電話回線への接続機能がない、といった機能の省略はあるもののわずか199ドル。アップル「iPad(アイパッド)2」の場合は、最安値のモデルであっても499ドルであり、その安さは驚異的だ。いったいコスト構造はどうなっているのだろうか。
9月30日、コスト分析で定評のあるIHSアイサプライが「キンドル・ファイヤ」のコストダウン分析を発表している(下表)。これによるとアマゾンは1台売るごとに10ドルの損失を出すことになる。つまりアマゾンは、“逆ザヤ”で販売するわけだ。
ただし同社のレポートによると、デジタルコンテンツの販売から得られる利益により1台あたり利益は10ドルになる、と分析している。ハードを販売した時点では赤字であっても、まずは幅広く普及させて、アマゾンのさまざまなサービス(デジタルコンテンツ販売だけでなく、ファッションから日用品、家電にいたるさまざまな買い物)の利用頻度を高めることで、利益を得ようとしているのだ。
アマゾンはあくまで小売業
アマゾンはハードの逆ザヤ販売により採算悪化のリスクを犯しているのかといえば、実はそうではない。アマゾンは2011年4~6月期の売り上げが99億ドルに対して純利益が1.91億ドル。純利益率は1.9%に過ぎない。典型的な小売り事業者の利益構造であり、199ドルの端末を販売してもデジタルコンテンツや商品販売でわずかでも稼ぐことができれば、収益悪化につながることはない。