統合効果は巨大でも、悩み深い「新日鉄住金」
新日本製鉄と住友金属工業が経営統合の検討を開始してから半年。両社は2012年10月の統合へ向けた基本契約を結んだと発表した。新会社の名前は「新日鉄住金」。存続会社は新日鉄で、合併比率は住金1株に対し、新日鉄株0・735を割り当てる。粗鋼生産量は5000万トンとなり、世界2位に浮上する見通しだ。
両社は統合効果について、統合3年後をメドに年1500億円規模とそろばんをはじく。海外生産の再編・強化や技術・研究開発の融合、調達の効率化などによって、競争力を高める腹積もりだ。
国内の需要は低迷しているが、人員削減や粗鋼を生産する高炉の再編は行わない。というのも、輸出は自動車用鋼板を中心に拡大。高炉はフル稼働が続いているうえ、海外に振り向ける人材も不足ぎみだからだ。両社は統合によって、そうしたボトルネックが解消すると期待する。さらに、海外に生産拠点を設けて、生産能力を年1000万~2000万トン積み増す考えも明らかにしている。自動車用鋼板の需要が膨らむタイ、原料も豊富なブラジルやインドなどが候補となりそうだ。
「(年1500億円に)グループ会社の統合効果は含まれておらず、上積みの可能性が高い」(山口敦・UBS証券シニアアナリスト)
勢力を増す韓国ポスコ
ただし、足元の収益環境は厳しさを増している。
その一つが、原料となる鉄鉱石の値上がりだ。年1500億円の効果も「鉄鉱石が20ドル近く上昇すれば相殺されてしまう」(山口アナリスト)。鉄鉱石スポット価格は足元でトン当たり180ドル台後半で推移。09年9月が80ドル台だっただけに騰勢はすさまじい。価格転嫁が十分に進んでおらず、マージンの悪化は顕著になっている。