ホンダ創業者の今でも語られる「小4の頃」の逸話 「創意工夫は苦しまぎれの知恵」という言葉の原点

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「赤ばかりじゃおもしろくないからな」 青や黄色のエナメル塗料をぬって金魚ばちに放してやると、一気にカラフルになりました。

ところが、満足したのも一瞬のこと。塗料をぬられた金魚は死んでしまい、大目玉をくらいました。

大人たちからすると、悪ガキだろうね。字を書くのがきらいで試験はさっぱりだったけど、宗一郎は物をつくったり、「こうすればもっとよくなる」と思って工夫したりするのが好きだったんです。

無料で飛行機ショーを見るためにとった行動

小学校4年生のときは、家から20キロも離れた場所でアメリカの飛行機ショーが行なわれると知り、一人で見にいきました。「行っちゃダメ」と言われると思ったから、親にはないしょ。学校をさぼってお父さんの自転車を持ち出し、出かけます。ようやく着いた……と思ったら、ショーを見るための入場料が足りず、入れてもらえないのです。

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ここですごすごと引き下がる宗一郎ではありません。なんとかして見ることはできないか? 見ると会場のすぐ外に松の木があります。宗一郎はこれによじ登り、木の上からの見物に成功しました! もちろん、下から見つからないように枝の位置なんかも工夫したんだって。

はじめて見た飛行機ショーのすごいこと! パイロットになった気分で大興奮で家に帰りました。お父さんにバレて大目玉をくらったかって? いいえ、じつはお父さんも興味津々で「どうだった?」と盛り上がったらしいよ。

のちに本田宗一郎は「創意工夫は苦しまぎれの知恵である」と言っているんだけど、困ったときに工夫のアイデアが出てくることってあるよね。思い通りにできないことも多いからこそ、工夫の楽しさを知ることができるのかもしれないね。

■出展
『本田宗一郎 やってみもせんで、何がわかる』伊丹敬之著 ミネルヴァ書房
『本田宗一郎 夢を力に』本田宗一郎著 日経ビジネス人文庫
齋藤 孝 明治大学教授

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さいとう たかし / Takashi Saito

1960年静岡県生まれ。東京大学法学部卒業後、同大大学院教育学研究科博士課程等を経て、明治大学文学部教授。専門は教育学、身体論、コミュニケーション論。ベストセラー著者、文化人として多くのメディアに登場。著書に『声に出して読みたい日本語』(草思社)、『読書力』(岩波書店)、『雑談力が上がる話し方』(ダイヤモンド社)、『質問力』(筑摩書房)、『語彙力こそが教養である』(KADOKAWA)、『読書する人だけがたどり着ける場所』(SBクリエイティブ)ほか多数。著書発行部数は1000万部を超える。

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