ハイテク株暴落、トランプ「台湾発言」を読み解く 米中台に構造変化のリスクは生じるのか?

✎ 1〜 ✎ 5 ✎ 6 ✎ 7 ✎ 8
著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

「TSMCは信じられないほどすばらしい。四半世紀以上にわたり協業し、お互いリズムを知り合っている」。アメリカの半導体大手エヌビディアのジェンスン・ファンCEOは6月に台北で会見した際にそう語り、鴻海などほかのサプライチェーンもベタ褒めした。

この見本市にはほかにもインテル、AMD、クアルコムなど世界大手の半導体企業のトップが出席し、場は半導体サミットと化した。極東の島国にこれだけの首脳が集まるのは、彼らにとって最重要のパートナーたち(競争相手でない)がいるからである。TSMCはもちろん鴻海やペガトロンなど台湾企業がいなければ、アメリカ企業の多くは電子部品・機器の販売やサービスの提供ができない。

摩擦につながりづらい米台経済関係

米中対立の激化で生産拠点の移転も叫ばれるが、そのサプライチェーン再編や脱中国の要望に応じて、その実現を担うのも台湾企業である。アメリカの経済・産業界を支える黒衣として台湾は中核的な地位を占め、容易に切り離せたり、潰せたりする対象ではない。

日米貿易摩擦や米中ハイテク摩擦が起きてきたことから、トランプ氏の姿勢が米台間での新たな貿易摩擦につながるとの見方が一部にあるが、それは考えづらい。自動車やハイテク産業などの主要産業でライバル関係にある日米、米中と構図が異なるからだ。

近年はTSMCがアメリカや日本、ドイツに工場を設置していることから台湾企業が日米欧政府の圧力に屈し、脱台湾を進めているとの見方も一部にあるが見当違いである。半導体の絶対的な需要が増加し続ける中、土地や水、電気などのリソースが限られる台湾だけで世界から求められる需要に対応できなくなりつつある。

需要増に応じつつ、自社のシェアを維持するためにも海外に生産拠点を拡大するのは自然なことだ。海外展開は必ずしも圧力で無理強いされているわけでもないのだ。現にTSMCは最先端品の製造工場や研究開発拠点の中心を台湾から移す意思をもっていない。半導体のサプライチェーンが整備された台湾での事業が最も効率的だからだ。TSMCの顧客であるアメリカのハイテク企業も自社事業のさらなる成長にはTSMCの製造技術の発展が必要で、同社の展開方針を外から無理に口だしできるものでもない。

関連記事
トピックボードAD