ハイテク株暴落、トランプ「台湾発言」を読み解く 米中台に構造変化のリスクは生じるのか?

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台湾が進める国防強化に対しては、トランプ氏に限らずアメリカでは「生ぬるい」という批判は多い。台湾の国防予算は対GDP(国内総生産)比で2.5%だが、ロシアの脅威にさらされるエストニアやポーランドが同3~4%であるのよりは低い。ロシア以上の脅威がある中国に直面する台湾はもっと負担してしかるべきというのだ。

このような不満に対し、台湾政府の関係者は「言われなくても(予算は)増やそうとしている。むしろ増やした後に武器や装備を購入できるのでしょうね」と冗談交じりに話す。過去には台湾が兵器の購入や更新を行いたくても、中国に配慮するためとしてアメリカが売却に消極的だったこともあるからだ。

台湾与党・民進党のある古参幹部は苦笑しつつ話した。「(2000~2008年時の)陳水扁政権の時はアメリカから中国を刺激するな、自己主張するなと台湾はトラブルメーカー扱いされてきた。それに比べれば国防費を増やせ、アメリカにもっとお金を出せというのは台湾にとって悪い話じゃない」。トランプ氏によって台湾の目指したい方向がむしろブーストされている、そんな見方すらできるのである。

米台経済は競争でなく補完関係

「幸い台湾経済は悪くない。国防費を増やす余力はまだある」(前出幹部)とも自信をみせる。実際、半導体を中心にエレクトロニクス産業が活況を呈して、社会保障制度の改革などで課題を抱えつつも台湾経済を牽引する。

台湾は半導体受託製造の世界シェアで7割を占め、先端半導体に限れば9割を製造する。またパソコンやスマートフォンなど電子機器の受託製造でも台湾企業は世界的に圧倒的なシェアを誇る。直近は生成AI(人工知能)ブームもありサーバー本体や部品の製造が好調だ。EMS(電子機器受託製造)で世界最大手の鴻海精密工業は2024年1~3月期の純利益が前年同期比72%増だった。

当然、トランプ氏が目の敵としているのもこれら台湾のエレクトロニクス産業だ。彼からは台湾がアメリカの製造業とその雇用を奪ったとしか見えないのだろう。事実、台湾の電子機器産業はアメリカなどの企業が自ら製造するよりも製造を委託したほうがよいと考えたから発展してきた側面は否定できない。

しかし、それは産業の関係性でいえばアメリカと台湾は競争よりも補完関係のほうが強いということだ。それを象徴するシーンが今年もあった。6月上旬に台北で開催されたアジア最大級のIT見本市「Computex台北(コンピューテックス台北・台北国際電脳展)」である。

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