大谷翔平が「世界一」と紹介"もちもち"ヨーグルト 岩手・岩泉ヨーグルト 誕生秘話と苦難を聞く

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「なんとか販売量を増やし工場の稼働率を上げなくては」。

山下さんが活路を見出したのが、大ロットの業務用というマーケットだった。ヒントになったのは、都内ホテルの朝食ビュッフェ会場で目にした、ヨーグルトの入った大きなボウル。そしてホテルスタッフの「いちいちパックから移すのが面倒」という言葉。

そこで大容量のパッケージを探しにホームセンターへ行ったところ、見つけたのが丈夫なアルミパウチだった。

岩泉ヨーグルトは“後発酵”という製法で作るため、容器に充填してから33~35度の低温で20時間発酵させる。アルミパウチを使った製造を始めて数日後、工場のスタッフから「前よりヨーグルトがもちもちしている!」と報告を受けた。食感の変化だけでなく、生乳の甘みがさらに際立っていた。

アルミパウチを使った商品
もちもちとして独特の食感の秘密はアルミパウチ(写真:岩泉ホールディングス提供)

「後発酵のヨーグルトにとって、アルミパウチはいわばヨーグルト工場。岩泉ヨーグルトの味を決定づける要素になりました」。

この新生岩泉ヨーグルトを携えてホテルを営業に回り手応えをつかむと、岩手県内のスーパーで試食販売する機会を得て、自ら店頭に立った。

県内のスーパーに並ぶアルミパウチ入りのヨーグルト
岩手県内のスーパーに並ぶアルミパウチ入りのヨーグルト。その元祖が岩泉ヨーグルトだ。(写真:筆者撮影)

食感が評判となり、取扱店舗が増加。当初の2kg入りに加えて1kg入りも投入し、売上は右肩上がりに伸びていった。町内の購入者も増え、町の特産として浸透し始めた。

黒字から一転。台風被害で存続の危機

就任から6年後には、就任時に抱えていた2億8000万円の累積赤字を解消。町内の酪農家から「牛を育てている甲斐がある」など感謝の言葉を掛けられることも増えた。

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