早くも孤立する震災仮設住宅の高齢者、テレビを見て寝るだけの日々が続く

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 自治組織の結成も遅れぎみだ。青木さんや橋本さん夫婦が住む高久第十応急仮設住宅では、入居から1カ月以上が経つにもかかわらず、自治組織はまだできていないという。加えて、住民がバラバラに入居したため、「以前からの知り合いはいない」(英次郎さん)。
 
 町の臨時職員が1週間に1度、安否確認に訪れるものの、それ以外は行政との接点もほとんどないという。入居時に設置を申し込んだものの、「電話もまだつながっていない」(英次郎さん)。

福島県郡山市内の仮設住宅には、原発事故で故郷を追われた富岡町の住民が多く生活している。「緑ヶ丘東部仮設住宅」(タイトル横写真)もその1つで、JR郡山駅から6キロメートル近く離れた郊外の住宅地の一角にある。この地に住む高齢者の生活ぶりも似たようなものだ。

渡辺英子さん(75)は原発事故前は畑仕事をしていたが、現在は「食っちゃ寝、食っちゃ寝の毎日」。夫は以前はトラクターに乗っていたが、「最近は元気がなくなって外にも出なくなった」(渡辺さん)。
 
 近所に住む伊藤裕郭さん(70)は「国はいつまでここに縛り付けようとしているのか。故郷に帰れないなら帰れないではっきりしてほしい。今のままでは生殺しだ」と怒りをあらわにする。

木造で風通しのよい高久第十応急仮設住宅とは異なり、緑ヶ丘東部仮設住宅は薄い鉄板でできていて、真夏には耐えられない暑さになったという。ただ、電気代がかさむという理由で、猛暑の日でもエアコンをつけずに我慢している人は少なくなかった。

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