「犬吸い」「猫吸い」は愛情表現だと考える人の盲点 専門家が「おすすめできない」と話す理由とは

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苅和さんによると、これらの対策を適切に行えば、過度に動物由来感染症を怖がる必要はないという。

ただし、子どもや高齢者、がんを患っている人、抗がん薬など免役を下げる薬を使っている人、基礎疾患(高血圧や糖尿病など)がある人などは、重症化リスクがあると考えて、注意してほしいそうだ。

「何か症状が表れた場合は、発症から1~2週間ぐらい前までさかのぼってみて、ペットにかまれたり、なめられたりしていないかどうかを思い出し、その旨を受診の際に医師に伝えてください」(苅和さん)

野山にペットを連れて行くときは?

最後にこの夏、野山にペットを連れて行く場合の注意点を挙げたい。

動物由来感染症のなかで近年、とくに増えているのが「重症熱性血小板減少症候群(SFTS)」だ。SFTSはマダニが媒介するウイルス性の感染症で、人が感染すると、発熱、倦怠感、消化器症状のほか、頭痛、意識障害などが見られ、重症化して死亡することもある。

致死率は約27%と高く、2017年にはSFTSに感染した野良猫にかまれた50代の女性が死亡している。

人だけでなく動物にも症状が出ることが知られており、なかでも猫が感染すると、重症化しやすいといわれている。

多くは、人が野山や草むらなどでマダニにかまれ感染するケースだが、上述のようにマダニにかまれて感染した犬や猫に人がかまれて感染することもある。これまでは西日本を中心に増加していたが、東日本にも広がりを見せているという。

感染対策として苅和さんは、次の点を挙げる。

これまではSFTSの治療薬はなかったが、幸いにも2024年6月、厚生労働省は抗インフルエンザ薬の「アビガン」をSFTSの治療薬として使用することを承認した。世界初のSFTS治療薬という。

動物由来感染症はいずれも適切な対策を取れば、発生する頻度は高くない。この病気の性質を理解したうえで、ペットと暮らすことが求められている。

井上 志津 ライター

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いのうえ しづ / Shizu Inoue

東京都生まれ。国際基督教大卒。1992年から2020年まで毎日新聞記者。現在、夕刊フジ、週刊エコノミストなどに執筆。福祉送迎バスの添乗員も務める。WOWOWシナリオ大賞優秀賞受賞。著書に『仕事もしたい 赤ちゃんもほしい 新聞記者の出産と育児の日記』(草思社)。

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