2024年「路線価」から見る「不動産市場の三極化」 景気回復や観光需要で上昇傾向だが地域格差も

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地方における地価の上昇は、地方創生や観光振興策が効果を上げている証拠である。特に観光業が回復し、観光客が増加したことで商業地の需要が高まった。これにより、地方の経済も活性化し、地価の上昇が見られるようになった。

特定地域の事例としては、栃木県宇都宮市が昨年8月に開業した次世代型路面電車(LRT)による交通利便性向上により、沿線住宅地の地価が上昇した。

また熊本県菊陽町は台湾積体電路製造(TSMC)が進出した影響で、全国で2番目の高い上昇率になっている。

路線価上昇率

下落地域もあり進む「三極化」

全国的に見れば上昇基調を示した路線価だが、すべての地域が同じ恩恵を受けているわけではない。特に地方都市や一部の都市圏では、下落している地域も存在する。

下落地点の特徴の一つが「人口減少と高齢化が進行する地域」だ。

日本全体で人口減少と高齢化が進行している中、特に地方都市ではその影響が顕著である。人口減少が進み、若者の流出が続いているため、不動産の需要が減少し、地価が下落しているのだ。

今回発表された標準宅地の路線価でも、増減率を都道府県別で見ると、下落している県もある。

全国で最も下落幅が大きかったのは和歌山県(▲1.0%)。四国は徳島県(▲0.4%)、香川県(▲0.3%)、愛媛(▲0.8%)、高知県(▲0.1%)と4県すべてで下落している。九州では福岡県に続いて佐賀県や熊本県も2.7%の伸びを見せる中、鹿児島県(▲0.7%)だけが下落した。

ほかにも栃木県(▲0.2%)、群馬県(▲0.5%)、新潟県(▲0.5%)、富山県(▲0.7%)、福井県(▲0.5%)、山梨県(▲0.2%)、奈良県(▲0.2%)、鳥取県(▲0.2%)、島根県(▲0.1%)が下落した。

筆者は日頃から、不動産市場の「三極化」を提唱している。

三極化とは「価格維持または上昇する物件」、「なだらかに下落する物件」、「無価値または固定資産を払ってマイナス価値になる物件」のことを言う。

今回の路線価も、まさにこの三極化が顕在化した格好となっている。

長嶋 修 不動産コンサルタント(さくら事務所 会長)

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ながしま おさむ / Osamu Nagashima

1999年、業界初の個人向け不動産コンサルティング会社『株式会社さくら事務所』を設立、現会長。以降、さまざまな活動を通して“第三者性を堅持した個人向け不動産コンサルタント”第一人者としての地位を築いた。国土交通省・経済産業省などの委員も歴任している。主な著書に、『マイホームはこうして選びなさい』(ダイヤモンド社)、『「マイホームの常識」にだまされるな!知らないと損する新常識80』(朝日新聞出版)、『これから3年不動産とどう付き合うか』(日本経済新聞出版社)、『「空き家」が蝕む日本』(ポプラ社)など。さくら事務所公式HPはこちら
 

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