釧路湿原の大量メガソーラーに土地買取で対抗 原野商法で取得した土地「手放したい」人々も
原野商法とは、1970年代後半~80年代に盛んだった「将来、高値で売れる」とのセールス文句で山林や原野を売り込む不動産ビジネスの方法。詐欺罪に問われたり、宅建業法の免許取り消しなどの行政処分を受けたりした事例も多かった。
黒澤理事長が「宅地ではなく原野なのに図面だけを見せて売ったのだろうか。あるいは、将来このような宅地になる、と説明して売ったのか」と首を傾げる例もある。トラストサルン釧路が2012年に取得した南部湿原の20ヘクタールの土地の近くには、インターネット上で入手できる地番図で見ると、道路用地のように見える線に沿って100坪(330㎡)程度の区画が区切られ、宅地のように見える場所がある。実際には道路も区画もなく、ただ湿原が続いているのだという。
自らの金で買い取りを行うキタサンショウウオの研究者
釧路市指定の天然記念物、キタサンショウウオは、体長が約11センチと小さく、湿原の中のごく狭い範囲で一生を過ごす。4年前、環境省のレッドリストで「準絶滅危惧種」から「絶滅危惧IB類」へと危険度が2ランク上がった。
NPO法人・環境把握推進ネットワークPEG理事長の照井滋晴さん(41歳)は、釧路教育大学在学中からキタサンショウウオの研究を続けてきた。釧路市文化財保護条例に基づく釧路市立博物館による生息状況の調査に協力。その結果は、照井さんら関係者を慌てさせた。
南部湿原のキタサンショウウオの生息適地と太陽光発電事業の予定地が重なり合っていることがわかったからだ。予定地は、資源エネルギー庁公表のFIT制度(再生可能エネルギー特別措置法に基づき有利な価格で再エネにより発電した電気を売れる制度)の認定情報をチェックすればわかる。
2023年12月、照井さんは南部湿原の土地2カ所、計4627㎡を購入した。「近くにメガソーラーの建設予定地があり、比較的まとまった大きさの土地だったので。所有者さんがさまざまな費用を払っても損をしない価格帯で、自分の金で購入しました」という。
この2カ所にキタサンショウウオが生息しているかどうか、まだ調査できていないが、「良い湿地が残っており、どのような生物が生息しているか調査を進めたい」と照井さんは考えている。
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