釧路湿原の大量メガソーラーに土地買取で対抗 原野商法で取得した土地「手放したい」人々も

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原野商法で湿原の土地を買った人たちのうち、「土地を手放したい」と思う人と、「固定資産税もかからないし、このまま推移を見たい」という人の割合はどのくらいなのだろうか。佐伯さんは、「いまは、半々ではないか」と見ている。

不要な土地だが、環境価値のある土地をどうするか

所有者不明土地や不要土地などの問題に詳しい東京財団の吉原祥子研究員によると、全国で「不要な土地を手放したい」という人は多い。

所有者不明の土地や不要土地の研究を続ける吉原祥子さん(撮影:河野博子)

その“証拠”として吉原さんが挙げたのが、「相続土地国庫帰属制度」への相談件数の多さ。登記手続きが済んだ土地で、不要なものを国が引き取る制度で、2023年4月にスタートしたが、2024年3月までに相談件数が2万3000件を超えた。

国に土地を受け取ってもらうにはさまざまな要件があり、土地管理費を含む負担金を納めなければならない。実際に国が受け取ったのは2024年5月末時点で460件だが、高い関心を呼んでいる。

不要土地を抱える人たちは、身近な市町村にまず相談することが多い。トラストサルン釧路によると、2012年に取得した湿原の場合、所有者が最初に釧路市役所に電話をかけ、「市が買い取ったり、寄贈を受けたりはできないが、湿原の土地の買い取りをしている環境団体がある」と聞いて連絡してきたという。

なぜ市町村は不要土地を受け取らないのだろうか。「管理コストと管理責任が半永久的に続いていくからです。受け取るということは、行政目的があるから、受け取って管理責任を負担していくわけです。使い道のない土地をもらえば、火災、不法投棄、土砂災害が起きた時、管理責任を問われることになる。人もお金もないなかで、個人の財産にかかわることに積極的に首は突っ込まない」。吉原さんはこのように説明する。

しかし、中長期的には、土地の管理や利用を個人や財産を継いだ親族にまかせている現状を変えなくてはいけない。吉原さんをはじめ土地問題にかかわる人々はそう考える。吉原さんは「自然環境保全のために土地の買い取りを進める民間の団体と自治体が何らかの形で協力、連携して活動するなどの方法が有効ではないか」と指摘している。

釧路市には、2023年7月に施行された「自然と共生する太陽光発電施設の設置に関するガイドライン」がある。また、市と釧路湿原自然再生協議会(国、北海道、釧路市、釧路町など5市町村、民間団体、個人で構成)はそれぞれ、ホームページで希少生物の生息適地を明示し、そこへの設置を避けるよう発電事業者に呼びかけてきた。

しかし、市内の太陽光発電施設は2014年6月には96施設だったが、2023年12月には631施設と6.6倍に増えた。このうち出力1000kW以上のメガソーラーは22カ所。太陽光発電施設の進出に歯止めがかからない。市と市議会は現在、ガイドラインの条例への格上げを検討中だ。

南部湿原にあるメガソーラー。発電所ができる前、この付近では、タンチョウの営巣やチュウヒの繁殖が確認された(撮影:河野博子)
河野 博子 ジャーナリスト

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こうの ひろこ / Hiroko Kono

早稲田大学政治経済学部卒、アメリカ・コーネル大学で修士号(国際開発論)取得。1979年に読売新聞社に入り、社会部次長、ニューヨーク支局長を経て2005年から編集委員。2018年2月退社。地球環境戦略研究機関シニアフェロー。著書に『アメリカの原理主義』(集英社新書)、『里地里山エネルギー』(中公新書ラクレ)など。2021年4月から大正大学客員教授。

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