老朽化しても破裂しない--モリタグループが新型消火器を投入、アルミ使い軽量化も
消防車を軸に消火器や自転車なども展開するモリタホールディングスグループは9月1日、消火器の新製品「ALTESIMO アルテシモ」シリーズを発売する。常に容器内にガスの圧力がかかる「蓄圧式」を採用。これまでの主流で、使用の際に急激な圧力がかかる「加圧式」に比べて老朽化した際の破裂事故などの危険性を小さくしたうえで、圧力が漏れず簡単にメンテナンスできる構造として、従来の蓄圧式の弱点を克服したのが特徴だ。
アルテシモはモリタグループで、消火器を手掛けるモリタ防災テック(東京都港区)と宮田工業(神奈川県茅ヶ崎市)が製造・販売する。素材にアルミを用い、溶接のない一体成型構造を採用。従来の蓄圧式消火器の課題だった「圧力漏れの懸念」をなくしたうえ、鉄製と比べて20~27%程度軽い。さらに気密を短時間に確認できる機構も備え、プラスドライバー1本で放射レバーを脱着できるので、部品交換作業を簡素化できるといったメンテナンス性の向上も実現した。
アルテシモシリーズは消火薬剤の容量に応じて住宅用(一般家庭向け)2種類と業務用の計3種類で構成する。価格は9800~1万9000円と、鉄に比べてコストの高いアルミを使っているため、一般的な市販の消火器に比べると1~2割程度高い。
今2012年3月期の販売目標は、モリタグループが販売する消火器の35%にあたる40万本。3年後には250万本を目指す。モリタ防災テックの土谷和博社長(=写真=)は8月30日に都内で開いた会見で、「3年後には消火器全体で700万本の市場が想定され、そのうち約8割(560万本程度)が蓄圧式消火器になると考えているが、その蓄圧式で5割のシェアを目標にしたい」と自信をみせた。
これまでの消火器は、使用時に加圧用ガスの入ったボンベをカッターで開封して消火薬剤を噴射する加圧式が主流だったが、2009年9月に大阪で老朽化した加圧式消火器の破裂事故が発生。これを契機に消防庁が老朽化した消火器の安全対策に乗り出し、今年1月には消火器の標準的な使用期限や廃棄時の連絡先などの安全上の注意事項について表示を義務づける法令が施行された。
加圧式が使用の際に急激な圧力がかかるのに対し、蓄圧式は常に容器にガスの圧力がかかっている。また、内部の圧力を測る計器が付属しており、内部の状況が確認できるという利点もある。こうした背景から、近年は加圧式に比べ老朽化しても安全性が高いとされる蓄圧式消火器が注目されており、消火器メーカーは大きな転換点を迎えている。
また、30日の会見における報道陣との質疑応答で、モリタグループ内で事業領域が重複するモリタ防災テックと宮田工業の統合の可能性について問われた土谷社長は、「われわれの内部ではいつでも統合できる。しかし、長年、モリタの代理店はモリタのブランドで、宮田の代理店は宮田工業のブランドでエンドユーザーに売ってきた歴史がある。代理店のことを考えると簡単に一本にはならない。いつ一緒になるかについては、早からず遅からずということになる」と述べ、統合の可能性は示しつつも、時期については明言を避けた。
(又吉 龍吾 =東洋経済オンライン)
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