ジュリー・ハンプ氏に「復活の道」はあるか 自動車業界キャリアパスの光と陰
オキシコドン密輸容疑で逮捕され、トヨタ自動車を辞任した前常務役員で米国人のジュリー・ハンプ氏。不起訴処分となり「容疑者」ではなくなったが、「トヨタ広報の顔」「ダイバーシティ人事の象徴」のキャリアは大きく傷ついた。
米国の自動車業界を代表するゼネラル・モーターズ(GM)の広報畑で長年キャリアを積み、飲料メーカーのペプシコで広報トップの上級副社長にまで上り詰め、キャリアに磨きをかけてきた。
今なお「ボーイズクラブ」と呼ばれることが多い米国自動車業界で、出世を勝ち取ってきた彼女が、日本企業であるトヨタに転職した理由は何だったのか。米国人にとっての自動車業界のキャリアパスとはどのようなものなのだろうか。
GMでの評判は極めて高かった
「逮捕のニュースを聞いてとにかく驚いた。広報仲間でも、ジャーナリスト仲間でも、ジュリー・ハンプのことを悪く言う人には、これまで本当にひとりも会ったことがなかったから」
そう語るのは、ハンプ氏が約25年間勤務していたGMで、2000年まで3年間、米国西海岸担当の広報官として働いていた経験のあるマイケル・コーテスだ。
GMでヨーロッパ地域の広報担当バイス・プレジデントまで出世したハンプ。コーテスが彼女と直接会ったのは社内広報全体ミーティングなどの機会2~3回のみだったが、社内外の評判がすこぶるよかったという記憶しかない、と彼は言う。「戦略的思考ができ、周囲といい人間関係を即座に作れることで知られていた。直属の部下からも尊敬されていて、前向きな性格で、とにかく一目置かれていたのを覚えている」。
コーテスは、内部から見たGMという企業の特徴をこう語る。
「GMは巨大な組織で、ヒエラルキー重視の縦社会。指令系統の段階が驚くほど細かく存在している。たとえば私がGM以前に働いていたクライスラーでは、広報部の私の直属の上司がCEOに直接進言し、CEOもそのアドバイスに耳を傾けるといういい意味での組織のコンパクトさがあった。特に社が経済的に苦境にあればあるほど、手っ取り早くイメージを立て直す戦略を提供できるのが広報部だからだ。だが、GMはまったく違う。組織の壁が非常に強固で、個人の人望の厚さで壁を突破していくことは難しい。そこでエグゼクティブにまで上っていくには、周囲が黙るほどの結果を出し続けるしかない」
無料会員登録はこちら
ログインはこちら