ジュリー・ハンプ氏に「復活の道」はあるか

自動車業界キャリアパスの光と陰

しかも、伝統的に「ボーイズクラブ」として知られる男性中心の自動車業界で、女性が頭角を現すには、ライバルの男性たちの何倍もの成果と努力を見せなければならないのが常だという。

ハンプは、ミシガン州のフェリス州立大学を卒業し、当時、フリントにあったビューイック工場のツアー案内係としてGMで25年間のキャリアをスタートした。広報畑、特に社内広報担当は、男性中心のGMのような製造業の企業で、例外的に女性が出世しやすいキャリアパスだ。

ハンプはラテンアメリカ、アフリカ、中東地域の広報を担当した後、ヨーロッパ地域の広報を統括する立場を任される。27カ国の地域の広報官をまとめる責任ある立場だ。

だが、デトロイトを世界の中心だと考えるGM経営陣にとって、ヨーロッパ担当広報のポジションは、出世の最短コースではない。前出のコーテスは次のように説明する。

「GMの本丸は米国市場。ヨーロッパではGMの車はそれほど売れていない。広報部でも出世頭のトップの人材は米国広報のポストにつかせるのが普通だ。距離と時差のあるヨーロッパから発信しても、社内での影響力はあまり大きくない」

自動車業界を渡り歩くことはよくある

終身雇用制という安定がまったく存在しない米国企業では、アップ・オア・アウトの原則、つまり、社内で出世し続けるか辞めるか、の二択であることが多い。社内で頭打ちの地位にいる場合、より大きな責任とパワーを得られるポジションを求めて他社へ転職するのはエグゼクティブを目指すなら当然のことだ。

自動車業界の中なら、GM、クライスラー、フォードなどライバル会社間での複数回の転職も当たり前だ。一社への忠誠心よりも、自分がより大きな責任を任される可能性がある方が重要なのが、米国ビジネスパーソンの基本の価値観である。

自身が、クライスラーからGMへの転職組だったコーテスは、「広報職はエンジニア畑などと違いゼネラリスト職だから、まったくの他業種でも通用するし、米自動車業界は他業種でより高い実績を積んで凱旋して戻ってくる人間を歓迎する空気がある」と言う。

ハンプはペプシコでの4年間で名実共に広報トップの地位を得た。年俸やストックオプションなどを含めた収入も、GMにいた頃とは比較にならないほど高かったはずだ。

そして2012年にペプシコからトヨタ北米本社の広報トップに転身した。

米企業カルチャーでの競争を知り尽くし、サバイバルしてきたハンプが、なぜ本社機能が日本にあり、経営の最終意志決定権がない米国のトヨタに入社したのだろうか。

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