都知事選を前に「蓮舫叩き」が盛り上がる事情 小池氏は出馬表明を遅らせ「公務に専念」と沈黙

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一方、週刊新潮は「『たぬきときつねの化かし合いー『小池百合子』VS『蓮舫』・都知事選“5つの争点”』と題し、小池氏の学歴詐称疑惑と、蓮舫氏の「二重国籍問題」を「脛に傷はどちらが深い」と揶揄している。さらに、週刊ポストも「蓮舫“息子が自民党入り”騒動に決着!?」と息子と母親の直撃取材を掲載。その一方で、ネット上では蓮舫氏が2日に有楽町で行った街頭演説会での公選法違反疑惑がトレンド上位となった。

この街頭演説会は、蓮舫氏が出馬表明後初めて東京・有楽町で行ったもの。報道陣や聴衆が雨に濡れて聴く中、蓮舫氏が屋根の下で演説したことが“女王様演説会”などと批判され、馬場伸幸・維新代表も「X」(旧ツイッター)に「自分達は濡れないところで演説をやる、というところがこの方々の普段の政治姿勢に現れていると感じるのは小生だけでしょうか?」と書き込んだ。

“女王様演説会”に公選法違反疑惑噴出

しかも、この演説会で蓮舫氏が「七夕に予定されている都知事選に蓮舫は挑戦します。皆さんのご支援、どうかよろしくお願いします」とあいさつ、応援に駆け付けた枝野幸男・立憲前代表も「みんなが安心して住める東京、日本をつくっていきましょう。そのために蓮舫さんを勝たせましょう」とエールを送ったことも問題視された。

演説会がメディアのニュースなどで報じられると、ネットを中心に「投票の呼びかけができるのは選挙中だけ。事前運動の公選法違反!」と問題視する声が噴出。立花孝志・NHK党党首も5日に自身のユーチューブで「明らかな公選法違反。蓮舫さんはそれなりの報いを受けると思う」と断罪した。

そうした状況も踏まえてか、小池氏は「公務に専念」とひたすら沈黙を守る。注目の出馬表明も関係者の間では「都議会最終日の12日か、14日の定例会見というギリギリのタイミングになる」とみる向きが多い。しかも、「出馬表明後も公務優先で、街頭演説などを自粛することで、蓮舫氏との違いを際立たせる戦略」(側近)だとされる。

そもそも、これまで都知事選で現職が負けた例はなく、「アンチも多いとされる蓮舫氏は、無党派層の取り込みにも苦労するはず」(選挙アナリスト)との見方が多い。このため「選挙戦が『静の小池と動の蓮舫』という構図になれば、一連の“蓮舫叩き”が勝敗を左右しかねない状況」(同)という歪んだ戦いになりかねないのが実態だ。

泉 宏 政治ジャーナリスト

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いずみ ひろし / Hiroshi Izumi

1947年生まれ。時事通信社政治部記者として田中角栄首相の総理番で取材活動を始めて以来40年以上、永田町・霞が関で政治を見続けている。時事通信社政治部長、同社取締役編集担当を経て2009年から現職。幼少時から都心部に住み、半世紀以上も国会周辺を徘徊してきた。「生涯一記者」がモットー。

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