【産業天気図・建設機械】当分「快晴」だが、米国景気や原油動向を注視

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建設機械業界は「快晴」との見方に変わりはない。世界的な建設機械ブームに衰えが見えないためだ。足元の動向を見ても、その需要の強さがわかる。
 たとえば出荷額の97%をカバーする日本建設機械工業会の発表数字では、4月の建設機械の出荷額は前年同月比19.7%増の1602億円で、43カ月連続の増加を記録。一方、輸出は同22.7%増の1076億円で49カ月連続の増加。国内も同13.8%増の526億円で19カ月連続の増加になった。
 ブームの背景にあるのは世界的な建設投資ブームと、それを支えるカネ余りだ。コマツ<6301.東証>の坂根正弘社長によれば「原油価格の上昇に代表される一次産品価格の上昇が資源国にマネーを流入させ、それが建設投資に向かっている。90年代以降の資金はもっぱら先進国に集中した。そうした資金の偏在が資源国の建設投資不足を生み出した。今、そこに資金が回り、建設機械需要が急増している」という。そこで活躍するのが日本の建設機械、とりわけ油圧ショベルだ。また、全世界の資源地域で旺盛な資源開発が行われているが、ここでは大型の鉱山機械などの需要が急増している。
 こうしたブームもあって、コマツや日立建機<6305.東証>といった主要な建設機械メーカー各社は、いずれも過去最高利益を享受している。その変化は劇的だ。というのも96年度をピークとする国内公共事業の減少傾向や世界的な景気後退の影響で、建設機械各社は2001年度を最悪期として大幅な設備圧縮や人員削減を行い、いずれも大赤字になった。しかし、それが損益分岐点を大きく下げた。しかも今度は米国、中国を牽引車とする世界的な景気回復と資源開発ブームが到来、かつてない建設機械需要が爆発し、コマツ、日立建機は06年3月期まで3期連続で過去最高利益を更新している。
 設備圧縮後だけに各社、新規投資には慎重だったが、受注残の累増を前に、ついに新規投資を決断。コマツは07年1月稼働予定で金沢と茨城に新工場を建設。日立建機も5月の霞ヶ浦の部品工場増設に続き、08年には茨城に新工場を建設する。また、部品関連業界でも、不足していたタイヤに関し、ブリヂストン<5108.東証>が大型、超大型タイヤの生産能力増強に踏み切っている。約170億円かけて下関工場の能力を08年までに20%アップさせる予定だ。
 こうした建設機械ブームがいつまで続くかは分からないが、ブームが世界的な景気動向と密接に絡んでいることは確かだ。メーカー各社は今後、米中の景気動向や原油価格の行方を注視しつつ、投資には果敢に挑むといった難しい対応が要求されそうだ。
【日暮良一記者】


(株)東洋経済新報社 会社四季報速報プラス編集部

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