地方はどうすれば「横並び」から脱出できるか 「プレミアム商品券」では地方は生き返らない

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では、どうしたら独自の取り組みができるでしょうか。

昨今、広島県と愛媛県を結ぶ「しまなみ海道」には、世界中からサイクリストが集まるようになっています。このような、新たな環境の変化を感じ取り、広島県尾道市にできたのが「ONOMICHI U2」という複合施設です。県営の倉庫を借りて活用し、地元若手経営者が設立した会社が、ホテル・レストラン等を経営しています。

広島県の県営倉庫を借りてホテルやレストランなどを運営する「ONOMICHI U2」。自転車で旅する「サイクリスト」だけでなく、多くの顧客でにぎわう

ONOMICHI U2の中核施設であるサイクリストホテル「HOTEL CYCLE」の特徴は、自転車を持ったままチェックインができ、客室まで持ち込めることです。サイクリストの方々が持つ自転車は、カスタムされた高いものが多いため、部屋にもって入りたいという特化型ニーズがあり、そこに遊び心も加えてやっています。

過去を振り向くだけではなく、未来に向けて地域の変化の兆しを感じ取り、絞り込みをしたことで、全く従来とは異なる優位性を地域にもたらしています。

「国から地方自治体へ」では、すでに限界?

このように地域の人材や環境に合わせた絞り込みを独自に行い、民間主導で進められる取り組みが地域に大きな変化を生み出す事例が増えています。

しかも、オガールアリーナ、ONOMICHI U2のいずれも、地域の40代の中堅経営者人材が主体となり、自分たちで経営しています。さらに地域の外からのおカネという意味での「外貨」を獲得でき、さらに個々のビジネスとして立派に成立しています。両者とも、地域の「稼ぎ」を増やすことに貢献するというパブリックマインドをもち、自らも儲けるという民間事業です。従来の活性化事業とは一線を画します。

だからこそ、値引きで量を追求するのではなく、むしろ付加価値をつけ、周辺ビジネスをセットで展開する方向にあります。

地方活性化のバトンは「国から地方自治体へ」ではなく、さらに飛び越えて地方の中堅・若手の経営者人材へと渡されることが必要かもしれない、そう考えさせられます。

読者の皆さんの地元にも、必ずこのような中堅人材がいます。横並び構造から抜け出し、「内発的」な絞り込みによる事業に取り組んではいかがでしょうか。

木下 斉 まちビジネス事業家

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きのした ひとし / Hitoshi Kinoshita

1982年東京生まれ。1998年早稲田大学高等学院入学、在学中の2000年に全国商店街合同出資会社の社長就任。2005年早稲田大学政治経済学部政治学科卒業の後、一橋大学大学院商学研究科修士課程へ進学、在学中に経済産業研究所、東京財団などで地域政策系の調査研究業務に従事。2008年より熊本城東マネジメント株式会社を皮切りに、全国各地でまち会社へ投資、設立支援を行ってきた。2009年、全国のまち会社による事業連携・政策立案組織である一般社団法人エリア・イノベーション・アライアンスを設立、代表理事就任。内閣官房地域活性化伝道師や各種政府委員も務める。主な著書に『稼ぐまちが地方を変える』(NHK新書)、『まちづくりの「経営力」養成講座』(学陽書房)、『まちづくり:デッドライン』(日経BP)、『地方創生大全』(東洋経済新報社)がある。毎週火曜配信のメルマガ「エリア・イノベーション・レビュー」、2003年から続くブログ「経営からの地域再生・都市再生」もある。

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