圧倒的な成功者は「無遠慮で嫌なヤツ」ばかり ジョブズ、マスク、ベゾスを見ればわかる

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アマゾンの従業員からは、ベゾスのとりわけ強烈な台詞が次々に出てくる。「きみは怠けているのか、それとも無能なのか?」「私の人生を無駄にするつもりか?」「私がバカだから理解できないのかな?」

マスクに12年間、仕えた忠実な女性秘書が大幅な昇給を求めたとき、彼は考えるから2週間の休暇を取るようにと言った。休暇が明けて出勤した彼女にマスクは、自分たちの関係はもううまくいかないと告げた。ヴァンスによると、2人はそれ以来、口をきいていない。

どれも侮辱的に思えるだろうが、彼らの悪しき振る舞いのほとんどは、意図的に人を傷つけるというより、不安に駆られた衝動的な反応ではないだろうか。優越感からではなく、むしろ自信がないからの言動ではないだろうか。

私自身、それを裏づけるような経験をしてきた。若いころの私は自分の価値を証明しようとがむしゃらになり、自分は永遠に期待に沿えないのではないかと不安でたまらなかった。最近は、周囲を気遣って鼓舞できるリーダーを目指すようになった。それでも、取引が失敗しかけたときや、プロジェクトの目途がたたないとき、社員の能力が足りないと思えるときは不安がこみ上げる。自分の手に負えなくなるかもしれないという感覚の恐ろしさは、私もよく知っている。

マスク、ベゾス、ジョブズのようなビジョンのあるリーダーは、自分が主導権を握らないと気が済まない。自分が求めるとおりのものが手に入らなければ──周囲が自分の求める水準に届かないと思えば──感情をあらわにして、まずい振る舞いをする可能性が高い。

成功者より価値のある人間に

彼ら3人は、事業を立ち上げて経営することに無限の時間とエネルギーを投じてきた。それ以外のことは、ほとんど気にもかけない。自分のために働く人々を気遣うこともなければ、そうした振る舞いが他人からどのように見えるかを考えたこともない。彼らにとって基本的に、人は自分の目的を達成するための手段だった。

対外的な成功のために自分のすべてを投じるとは、そういうことだ。ここまでやれば十分だという終わりはない。彼らにとって基本的に、従業員は目的を達成するための手段だ。

容赦のない厳しい要求が、従業員のパフォーマンスを向上させるかと聞かれれば、もちろんそんなことはないし、そのようなやり方は持続できない。従業員がより健全に、幸せになれるように支える職場のほうが、生産性も高くなることは疑うまでもない。

ただし、彼ら3人の経営スタイルが投げかける問題は、そこではない。彼らが素晴らしい製品の開発にのめり込む情熱と同じくらい、周囲への気遣いにも心を砕いていたら、はるかに多くの人々の人生を豊かにして成功を導けたのではないだろうか。

アルバート・アインシュタインは言った。「成功者ではなく、価値のある人間になろうとするべきだ」

(執筆:TONY SCHWARTZ、翻訳:矢羽野薫)

© The New York Times 2015

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