岡山のバス会社、「日本最安」運賃100円でなぜ黒字 「安かろう悪かろう」ではない快適性高める工夫

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そんな宇野バスのある岡山県内は、全国屈指のバス激戦区だ。岡山市内だけでも、路線バスを運行するバス会社は宇野バスを含めて9社。さらに、このうち8社は岡山駅東口のバスターミナルに乗り入れ、しのぎを削る。

岡山県がこうしたバス激戦区になった背景には、第2次世界大戦中にバス会社の戦時統合が行われなかったことにある。国内の多くの地域では、戦時中にバス会社の統合が行われ、整理されていったが、岡山県ではバス会社の統合が行われる前に終戦となり、戦前からのバス会社がそのまま残ってしまった。その結果、岡山県は全国でもまれにみるバス激戦地帯となってしまった。

こうした背景から、宇野社長は「可及的速やかに岡山県内のバス会社の統廃合を行うべきだ」と主張している。コロナ禍で深刻な経営問題を抱えたバス会社が増えたこと、さらにバスドライバー不足が深刻化していることがその理由だ。

「岡山県内のバス会社は速やかに統廃合を行うべき」

ドライバー不足の問題を例にとると、岡山県全体で考えた場合、すでに大型2種免許が必要な大型バスでは供給過剰となる程度の乗車人数しかいないバス路線がある。こうしたバス路線で運行されている大型バスを、本当に大型バスが必要とされている需要のある地域に再配置、最適化しなければ、本質的なドライバー不足の解消とはならない。バス会社が多すぎると岡山県全体でのバス路線の最適化を図ることは大きな困難を伴うことから、バス路線の最適化を考えるうえでも「県内バス会社の統廃合は不可欠」(宇野社長)と強調する。

また、具体的な統廃合のイメージについて宇野社長は「1社に統合すると競争をしなくなるため、2~3社にしたうえで競争してコストを下げるようにすることが必要」との考えを示している。

路線バス事業は、高度経済成長期をピークに市場が縮小し、すっかり儲からないイメージが強い業界となってしまった。しかし、儲からないからといって自治体などに陳情や助けを求めるだけではなく、宇野バスのように民間企業としてあるべき経営とは何かについてもう1度見直し、改善しながら事業を行えば、「黒字化」への道筋が開けるかもしれない。

小椋 將史 ライター

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おぐら・まさふみ / Masafumi Ogura

2000年静岡県生まれ、岡山県育ち。
岡山県立岡山朝日高等学校、高知大学人文社会科学部卒。現在、高知工科大学大学院在学中。高校時代から鉄道ファンイベントの運営に携わり、広報活動を実地で学ぶ。2019年には井原鉄道などとコラボした「#鉄路でつなぐ復興のみち」を主催し、NHKや毎日新聞など多数のメディアに取り上げられた。

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