「水卜アナ出世に憧れない若手」意外と多い"なぜ" "日テレの象徴"とされるが後には続かない?

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出発地点は、そんなゼロ、いやマイナスといっていい場所だった。しかし現在は、朝の情報番組の総合司会を務め、X(旧ツイッター)に桜の絵文字をポストするだけで322万インプレッションを稼げるほどの紛れもない“人気者”であり、異例の管理職昇進を果たした“出世頭”である。

そう考えると、出発地点と現在地点の距離は果てしなく長く、女性局アナ史上、最長の距離を走り、今もその距離を延ばしている人物と言ってもいいのかもしれない。

だが、だからこそ、その長距離の中に何があるのかは想像がつかない。女子アナ志望者にとっては、なり方がわからず、憧れの意識も生まれない。水卜麻美もまた「目指してなれるようなもんじゃない」アナウンサーなのだろう。

局内での出世以外にある「道」

水卜ほどの知名度の高さを誇りながら、局内に残り続ける女性アナウンサーはじつは少数派だ。辞めたあとの彼女たちにはどんな道が待っているのだろうか。

フリー転身後、写真集を発売し、現在は女優に転身した元TBSの田中みな実や、元テレビ東京の森香澄のように、会社員時代にTikTokをバズらせたあとにインフルエンサー事務所に所属して活躍する例もある。

元テレビ朝日の大木優紀や、元テレビ東京の福田典子のように、一般企業で広報を務める例もある(福田はフリーアナウンサーとしての活動も継続中)。

さらに、もう少し上の世代に目をやれば、元NHKの草野満代はオンワードホールディングスの社外監査役に、元フジテレビの菊間千乃はコーセー、中野美奈子は四国電力グループ・四電工、内田恭子はキッズスマイルホールディングスの、それぞれ社外取締役を務めているなど、取締役レベルでの活動も珍しくない。

いまや、“アナウンサーとして名を売った後”の道は多く、学生にとってもわかりやすく魅力的なのだ。“知名度を外で利用する”と言ったら、言い方が悪いかもしれないが、局内で得たものを局外に持っていく道のほうがわかりやすく、リターンも大きそうだと想像がつく。

一方で、アナウンサーとして局内で出世し続ける道はその数も少ないうえにわかりづらく、局外に出るほどにはリターンも得られさなそうだと想像が容易い。

今回の水卜麻美の特進は、6月1日から日テレで導入された新人事労務制度の『飛び級制度』の一環だといい、一部では年収は3000万円ほどになるとも報じられた。日テレとしては局内外へのアピールの意味もあっただろう。だが、それは皮肉にも、女子アナ志望者たちからすれば“わかりにくさの象徴”のようになってしまったのである。

霜田 明寛 ライター/「チェリー」編集長

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しもだ あきひろ / Akihiro shimoda

1985年東京都出身。国立東京学芸大学附属高校を経て早稲田大学商学部卒業。9歳でSMAPに憧れ、18歳でジャニーズJr.オーディションを受けた「元祖ジャニヲタ男子」。3冊の就活・キャリア関連の本を執筆後、ジャニーズタレントの仕事術とジャニー喜多川氏の人材育成術をまとめた4作目の著書『ジャニーズは努力が9割』(新潮新書)がベストセラーに。また、文化系WEBマガジン「チェリー」編集長として監督・俳優などにインタビューする。SBSラジオ(静岡放送)『IPPO』の準レギュラーや、映画イベントの司会も務めるなど、幅広くドラマ・映画・演劇といったエンターテインメントを紹介している

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