「SNS投資詐欺」の被害が爆増している根本原因 "メディア"や"広告主"の責任も問われている

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ネット広告の品質に関する議論は今に始まったことではない。

前出の長澤氏は2014年に28人のメディア関係者への取材をもとに『メディアの苦悩』を上梓しているが、指摘している問題の本質は変わっていないという。「一部のプラットフォームに依存することで生じる問題については10年以上議論してきた。詐欺集団まで入り込んできて底が抜けたようになってしまった今こそ、いよいよ変わらなければならない」と、広告主やメディアの軌道修正を訴える。

「広告は嫌われ者。それをユーザーに受け入れてもらうためにコンテンツメディアの包み紙につつみ、広告クリエーティブに粋をこらしてお届けして、ようやく見てもらえる存在だ。これはアナログでもデジタルでも変わらない人の感性原理だ。にもかかわらず、プラットフォーム事業者が主導してきたネット広告は、ユーザーの好意度とか信頼度を踏みにじるような土足マーケティングをしてきた。そのなれの果てが、なりすまし広告の蔓延。広告主もメディアも、そして広告代理店も、社会的課題になっている今こそ軌道修正する必要がある」(長澤氏)

広告主、メディアの覚醒が必要

広告主には、一部の良質なメディアへ出稿できるPMP(プライベート・マーケット・プレイス)を活用したり、メディアへの直接出稿に切り替えていく選択肢がある。ユーザーには、アドブロックソフトを使って、広告を表示させないようにするという選択肢がある。

こうした動きはまだまだ少数派だが、選択肢はあるのだ。広告主やユーザーがプラットフォームから逃げる動きが始まれば、プラットフォーム事業者の収益を直撃する。尻に火がつくわけだ。そうなれば、政府からのお小言がなくても、率先して質の改善に乗り出していくことになるだろう。

「ネットサービスの多くは広告収入で成り立っている。だからこそ広告のエコシステムが健全な形にならなければいけない。諸外国とも歩調を合わせて、プラットフォーム事業者への規制を進めていきたい。広告主やメディアの今後の動きにも注目していきたい」(小林議員)

SNS型投資詐欺による被害を減らしていくために、政府による規制強化が必要になっている点は間違いない。しかし同時に、広告主、メディアの覚醒が求められているのである。

山田 俊浩 東洋経済 記者

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やまだ としひろ / Toshihiro Yamada

早稲田大学政治経済学部政治学科卒。東洋経済新報社に入り1995年から記者。竹中プログラムに揺れる金融業界を担当したこともあるが、ほとんどの期間を『週刊東洋経済』の編集者、IT・ネットまわりの現場記者として過ごしてきた。2013年10月からニュース編集長。2014年7月から2018年11月まで東洋経済オンライン編集長。2019年1月から2020年9月まで週刊東洋経済編集長。2020年10月から会社四季報センター長。2000年に唯一の著書『孫正義の将来』(東洋経済新報社)を書いたことがある。早く次の作品を書きたい、と構想を練るもののまだ書けないまま。趣味はオーボエ(都民交響楽団所属)。

 

 

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