のと鉄道「全線運行再開」では喜べない現地の実態 鉄道を取り巻く地域の復興はまだ見えない

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この後3日間、筆者は能登でどこまで観光が可能なのか、そもそも観光客が訪れることが地域にとってどうなのか、ほんの一部だが見て回った。

全域、何らかの被害を受けていることは確かだが、原因は揺れ、崩落、津波、隆起、液状化など多岐にわたったりその複合であったりする。建物の外見的な被害も地域では分けられず、地盤により、土台により、躯体の構造により、屋根や上階の重量により、隣接していても状況はまったく異なる。主要道路は通行可能になっているが、今も集落内の生活路は工事中などで通行止めが各所にある。停電はかなり解消されているが、上水道はまだのところ、本管までは通ったが各戸への給水はできない家、飲用は不可の地域などたくさんある。

しかし、羽咋(はくい)市の氣多(けた)大社は「こういう時だからこそ」と1月2日から参拝を受け入れたのをはじめ、五重塔の妙成寺(みょうじょうじ)、宇宙への夢を広げるコスモアイル羽咋など通常に戻っている。波打ち際の砂浜を普通の車で走れる千里浜なぎさドライブウェイも、走行できる。まだ観光客が泊まれる施設は多くはないが、日に日に再開の話も伝えられているし、スーパーや道の駅で食材を買ってキャンプ場で自炊しながら泊まってみてもいい。

能登へ旅することが、応援のメッセージに

もちろん、「まだこんな状態なのに旅行じゃないだろう」と考える人もいる。復興のため、金沢の宿から先端部までだと毎日片道2時間半、3時間運転して作業に通う人たちの、妨げにならないかとの懸念もある。

しかし出会った人が口々に、「こうやって遠くから来てくれた人と話せて、気持ちが晴れた」、「ぜひこの状況を見て知って、帰ったらまわりの人に話して、能登のことを忘れないでほしい」と言っていたことも確かだ。

応急段階のインフラや住まいの再建にもメドがつかぬまま時が過ぎ、報道も少なくなって、もう自分たちは忘れられているんじゃないかという不安が蓄積してきているようだ。それは違うと伝えるには、大きな予算や人員を投入することも必須だが、並行して、1人の人として旅行を楽しみながら能登の人への思いをそっと置いてくることが、きっと力になると感じた。

柳澤 美樹子 りゅう文章工房代表

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やなぎさわ みきこ / Mikiko Yanagisawa

「旅・食・人」をテーマとした、著述・編集業。まちづくりや交通、伝統食、神社などに関心が深い。健康・医療を中心に、インタビューなども手がける。信州、金沢、伊勢・志摩をはじめとした地域ガイド、鉄道や生活文化などを取材・執筆。著書に『鉄道廃線跡を歩く』シリーズ、『達人に学ぶ鉄道資料整理術』など。

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