東大名誉教授が教える「物価上昇」続く根本原因 よいインフレ・悪いインフレの決定的な違い

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生徒 モノが売れている状況ではないのに、コストが上がったら大変な気がします。

はい。その通りです。例えば、普段通っているスーパーで、原材料の高騰などによってマヨネーズ1本当たりの値段が200円から、300円に値上げされました。消費者からすれば、食費の負担が増えたことになります。給料が上がらなければ、消費者の購買力は減少するでしょう。

一方で、企業にとってはコスト・プッシュ・インフレの背景となる原材料などのコストの上昇によって、収益が減少している状況です。販売価格を値上げして収益の改善を図ろうとしても、それだけでは企業の経営が苦しい状況に変わりありません。

企業はコスト上昇分を販売価格へ転嫁しようとしますが、すぐに反映できるわけでもなく、値上げができたとしても需要が減ることで、利益が圧迫されやすくなります。企業の利益が上がらなければ、私たちの賃金が大きく上昇することもありません。それでも物価が上がっているために、生活品への支出金額が増加。私たちの生活の負担感が高まるのです。

深刻な事態を引き起こすスタグフレーション

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コスト・プッシュ・インフレが悪い方向へ進むと、より深刻なインフレ「スタグフレーション」を引き起こすことがあります。たくさんの会社が人件費を抑えるために雇用を抑えると社会全体の失業率が増加して、一国の経済が大きく停滞するため、最も避けるべき状況のひとつと言われています。

ここまで駆け足で3つのインフレについて解説してきました。2024年現在、日本でインフレが起きていますが、これは日本経済が活性化したことが原因とは言えないでしょう。

つまり、現時点ではよいインフレではありません。今後、大企業だけではなく、中小企業の賃金上昇が物価上昇率を上回って経済の好循環が生まれるかが焦点となっています。

井堀 利宏 東京大学名誉教授

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いほり としひろ

東京大学名誉教授、政策研究大学院大学教授。東京大学大学院経済学研究科元教授。
1952年、岡山県生まれ。東京大学経済学部卒業、ジョンズ・ホプキンス大学博士号取得。東京都立大学経済学部助教授、大阪大学経済学部助教授を経て、1994年、同大学教授。1996年、同大学院経済学研究科教授。1993年、東京大学経済学部助教授。1993年~2015年の22年間、東大の経済学部及び大学院経済学研究科で教鞭をとる。2015年4月より政策研究大学院大学教授。

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