地味な路線だった「JR奈良線」、利用者の急増なぜ 沿線自治体も費用負担して複線化など輸送改善

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

宇治駅の観光需要も順調である。京都駅から16分というアクセスの良さが要因だ。世界遺産に登録されている平等院と宇治上神社。本年なら紫式部ゆかりのまちとしてNHK大河ドラマ「光る君へ」の効果が期待されている。

奈良への観光輸送はどうか。奈良市はJR奈良駅を利用する来訪観光客数は近鉄奈良駅利用の4割弱と推計している。JR駅は中心市街地や観光地から離れていることもあり、地元客も用務客も近鉄奈良駅と近鉄京都線を選ぶ。ただ、外国人観光客はフリー切符「ジャパン・レール・パス」を使っていることもあり、京都駅からJR奈良線を利用する流動が目立つ。

朝ラッシュ時の普通列車は平均6分も時間短縮

このようにJR奈良線では、設備投資が利用の増加をもたらし、新たな街づくりへとつながる好循環がおきている。

京都市エリアは人口の社会減が顕著になっているが、JR奈良線の駅周辺は今でもマンションやアパートの建設が進み、物件への問い合わせも多いという。特に伏見区と宇治市の境に位置する六地蔵駅は京都市営地下鉄東西線との乗換駅ということもあり、大規模商業施設やマンションが次々と完成する注目エリアとなった。

ただ、2001年の部分複線化後も、JR藤森―宇治間など線内の8割近くが単線で残った。朝ラッシュ時は1時間あたり片道8本運行されているため、列車行き違いのため停車時間が長くなった。

そこで府はJR西日本に複線化第2期工事の実施を要請し、2013年度に協定締結へこぎつけた。JR藤森―宇治間9.9km、新田―城陽間2.1km、山城多賀―玉水間2.0kmの計14kmで、2016年に着工する。あわせて京都駅と六地蔵駅のホーム拡幅などの改良工事も実施された。

そして2023年3月、第2期事業が完成する。増発は朝の京都―宇治間1往復にとどまった。

一方、「単線区間での交換待ち停車がなくなり、朝の普通列車が早くなったのが助かります」と語るのは、JR奈良線に関する著作がある高田圭氏だ。普通城陽―京都間の所要時間は平均6分縮まり、バラバラだった運転間隔が均等化された。通勤利用していると複線化の効果を実感しているという。

高田氏は「ダイヤの安定化という意味で、絶大な威力を発揮している」とも指摘する。以前は数分レベルの遅れは日常で、輸送障害が起きたら3~5時間は収束しなかった。それが複線化でほぼ皆無となった。

関連記事
トピックボードAD
鉄道最前線の人気記事