ふらり。 谷口ジロー著

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ふらり。 谷口ジロー著

『「坊っちゃん」の時代』で歴史マンガの金字塔を打ち立てた作者が、伊能忠敬を題材に江戸の町と風物を詩情豊かに描いた傑作である。50歳で家業を退き佐原から江戸へ出て悠々自適のはずが、天文・暦学・測量への興味やみがたく、ついに蝦夷(えそ)に測量に出掛けるまでの準備期間を描写して、話は進む。といって特段の事件が起こるわけでも、深刻な心理状態が語られるわけでもない。

エッセイ風、16の章立てが鳶(とんび)、桜、亀、猫、星、雨、蛍、雪などと風情十分で、人、動物、自然いずれが主人公とも言いがたいところが味わい深い。忠敬と妻の温かな会話がほほ笑ましく、超スローな展開は、これから始まる厳しい測量の旅と鮮やかなコントラストをなして読み手の想像をかき立てる。「測量のためには歩測が正確でなければ」と忠敬が歩き回る江戸の魅力を細密に描き込んだ作品の数々が見事だ。渋い物語に挑んだ作者の気概と豊かな情感には感服のほかない。(純)

講談社 919円

  

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