日本企業の年末にかけての格付けのトレンドはネガティブ《ムーディーズの業界分析》

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クレジット・ポリシー・アジア
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クララ・ ラウ

コーポレート・ファイナンス・グループ
SVPチーム・リーダー
谷本 伸介

ムーディーズ・インベスターズ・サービスは8月1日、2011年上半期の日本企業に見られたネガティブな格付けトレンドは年末にかけて続くと述べた。これは、事業環境における継続的な課題と、一部の業種に大幅かつ継続的な影響をもたらした3月11日の東日本大震災を背景としたものである。

格付けがネガティブな方向にあるポートフォリオの割合が、10年末の19%から36%に上昇したことに見られるように、年末にかけてネガティブな格付けトレンドが続くことは明白である。

電力・公益事業セクターが、ネガティブな格付けトレンドの最大の割合を占めており、製造業がそれに次ぐ。

格付け対象の日本企業の主な課題としては、(1)震災によってもたらされた多大な財務上の負担(特に公益事業および損壊した施設にかかる負担)、(2)円高、電力不足、国内の消費者心理の悪化、需要、サプライチェーンの寸断等の事業上の課題、さらに(3)低成長ならびにマクロ経済上の課題を背景とした国内企業の収益性に対する脅威が挙げられる。同時に、回復は予想より良好に進んでいる、とムーディーズは考えている。

ネガティブな格付けトレンドの度合い、あるいは安定化のスピードは、企業がいかに迅速に生産を回復し、復興需要および設備投資がいかに早期に経済全体に波及するかにかかっている。

11年上半期には、事業会社に対するネガティブな格付けアクションの件数は、第1四半期の14件から、第2四半期には25件に増加し、ポジティブな格付けアクションはなかった。

ネガティブな格付けアクションの3分の2以上は、5月31日に日本政府および邦銀の格付けを引き下げ方向で見直しの対象とした決定による、ソブリン関連のものであった。

ネガティブな方向にある格付けには、格付け見通しがネガティブであるものと、格付けが引き下げ方向で見直しの対象となっているものが含まれる。ポジティブな方向にある格付けには、格付け見通しがポジティブであるものと、格付けが引き上げ方向で見直しの対象となっているものが含まれる。

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