ミスドとコンビニ、ドーナツの仁義なき経済学 奪い合うのか、それとも広がるのか

✎ 1〜 ✎ 19 ✎ 20 ✎ 21 ✎ 最新
著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

そのような混戦状態の中で、今後のドーナツ戦争はどうなるだろうか。もともとミスタードーナツは、ダスキンが1970年に同米国本社と契約してスタートした事業だった。米国流の調理済食品小売ノウハウを徹底的に学び、日本に根付かせた。しかもその後に日本の消費者へ訴求力を上げるために、ドーナツの味を修正したり、新たなドーナツを開発したり、あるいは飲茶を提供したりした。

ビジネスを輸入するだけではなく、米国流の効率性と、日本の細やかさをハイブリッドしたという意味では、セブン-イレブンと似た点は多い。ただし、競争相手がいない業界は、特定企業の独占が進み、革新的な戦略が生まれにくい土壌をつくってきた側面もある。ここにコンビニ大手が付け入る隙があるのかもしれない。

コンビニの参戦でドーナツ市場は拡大する?

ドーナツ市場はここ近年、年間1200億円程度で推移してきた。これに対して、セブン-イレブンは4~6億個の販売を目指すことから、1個100円でざっと計算しても400億~600億円の需要を奪う計算となる。

もっともこれは、ドーナツ市場の規模が変わらないと仮定した場合だ。ミスドが存在しない地域では、単純にドーナツ需要が伸びるだろう。またはコンビニでドーナツの味を知った消費者が、ミスドにも流れるケースも考えうる。

ドーナツ市場は、限られたパイを奪い合うというよりも、コンビニの参戦で広がっていくと思われる。それは先に述べたとおり、コンビニは間食需要を捕まえることで、未知のお客を開拓しているからだ。

ミスドの優位点は店内調理だ。ドーナツ専門店でみると、そのネットワークは他を寄せ付けない。そのミスドが今後打つ手は、高級ドーナツのラインナップ拡充。さらに、店内調理という強みを最大化するために、できたてドーナツも充実させる。

通常であればコスト合理化のために、一度に調理する数を増やすのが定石ながら、お客の購入タイミングと調理タイミングを合わせるために、ミスドは生産するドーナッツのロット数を減らすという、なんとも“非効率”な方法を採用する。

味覚ゆえに個人的な感想となるものの、まだコンビニ3社のドーナツよりも、ミスタードーナツのほうがおいしく感じる。その場、あるいは近隣でさっと食べるコンビニドーナツと、知人や家族に土産として持ち帰るミスタードーナツとは、用途が分かれる。

今のところ、コンビニドーナツをパーティに持っていくことは考えにくい。そこにはミスタードーナツなど専門店の優位性があると、少なくとも私はそう感じている。コンビニはドーナツを拡大させつつ、ミスタードーナツなどの専門店は明確な高付加価値商品によって別セグメントで闘うだろう。

うむ……。しかし、これも楽観的な見通しかもしれない。それでもコンビニがドーナツ需要の大半を飲み込んでしまう可能性もあるだろう。そうなったら、「ドーナッてんだよ」ということだろうな、きっと。

坂口 孝則 未来調達研究所

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

さかぐち・たかのり / Takanori Sakaguchi

大阪大学経済学部卒。電機メーカーや自動車メーカーで調達・購買業務に従事。調達・購買業務コンサルタント、研修講師、講演家。製品原価・コスト分野の分析が専門。代表的な著作に「調達・購買の教科書」「調達力・購買力の基礎を身につける本」(日刊工業新聞社)、「営業と詐欺のあいだ」(幻冬舎)等がある。最新著は「買い負ける日本」(幻冬舎)。

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事