円急落よりマズい「円弱体化」が進む日本の末路 多くの国民の生活水準が腐食しかねない
それは、日本が海外投資から多くの利益を得ており、その利益が増え続けているからだ。2023年には、海外投資からの純利益は34兆円、つまりGDPの6%に達する。2022年までの数年間で、日本の対外純資産は418兆円に達する。これはGDPの75%に相当する。そのうち162兆円は日銀の外貨準備である。
もしキャピタルフライト(資本がある国から別の国へ逃避すること)が始まるようであれば、日本はその通貨準備高を使って円を買い支えることができる。しかし、そうする必要はないだろう。
1998年のアジア通貨危機や2010年のユーロ債務危機のように、通貨危機に陥った国は日本とは逆の立場にあった。これらの国は毎年経常赤字を垂れ流し、その結果、大きな国際債務を抱えていた。
フリーフォールではなく、継続的な弱体化
日本は円のフリーフォールを防ぐことはできる。が、日本には為替介入をしたとしても円の継続的な弱体化を防ぐことはできない。円安は、日本経済が弱く、輸出企業の競争力がますます低下している結果だからだ。介入によって、避けられない事態を少しでも遅らせたり、市場が行き過ぎるのを防いだりすることはできる。
かつて世界を席巻した日本の産業の多くは、輸出価格を大幅に下げない限り競争力を失いつつある(円安は輸出市場におけるドルベースの価格低下を意味する)。
一方で、一部の企業は生産の大部分を海外に移転することによって、競争力を維持している。日本の自動車メーカーは、海外売上高の80%を日本からの輸出ではなく、海外生産で稼いでいる。その結果、以前と同じように輸出を増やすには、円の価値が大きく下がる必要がある。
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