「学校カメラマンは限界」5千枚撮影で日給2万円 首都圏の運動会に「関西から助っ人」仰天事情
さらに、学校写真の現場は重労働だ。
例えば、運動会では児童生徒全員を確実に写すことが求められる。学校にもよるが、撮影枚数は1日約5千枚。重い機材をかかえて校庭を走りまわり汗だくになった後は、学年別に写真をセレクトして納品しなければならない。
修学旅行の同行撮影では朝7時に東京駅に集合。新幹線での移動から撮影は始まり、名所旧跡をまわる生徒たちを一日中撮影する。夜は11時ごろまで学校や旅行会社と打ち合わせる。翌朝は6時起床、また撮影が始まる――。
「卒業式などの集合写真の撮影が1日で終わればいいですが、ほとんどの場合、欠席者があって、報酬なしで追加撮影がある。それが1回で済まないと、ストレスがたまります。学校はこちらのギャラについては配慮してくれない」(広告カメラマン)
「平日は4泊5日の修学旅行、週末は運動会で30連勤くらいしたことがあります。その間に納品もあるので、とてつもなく忙しい」(前出の松本さん)
写真の仕事に憧れて、今でも学校写真を目指す若者もいるが、実際に働いてみると、あまりにもきついので5年以内にやめてしまうことが多い。ある程度、撮影技術が身についてくれば、ECの商品を撮影したほうが楽に稼げたりするので、学校の撮影には戻ってこない。
理不尽なクレーム
保護者や教職員からクレームを受けることもある。
クレームの定番は、「うちの子の写真が少ない」。全員をほぼ同じ枚数で撮影しても、そう責められることはある。
時に理不尽なクレームもあり、卒業証書授与式で生徒の前髪が顔にかかってしまったりして再撮影になった際、教職員から「プロなのに再撮影はありえない」と激昂されたこともあった。
さまざまな苦労を経て出来上がる卒業アルバムは、カメラマンにとっては成果物でもある。だが、卒業アルバム制作の最大手ダイコロの担当者によると、アルバムにカメラマンの名前が載ることは「まれ」だ。
撮影クレジットが入らないから、学校撮影のカメラマンには提示できる作品がない。そのため「プロ」扱いされず、機材修理の割引サービスを受けられないこともあるという。
松本さんは、それでも「学校写真の撮影が好き」だと言う。大学時代から自分を育ててくれた写真館の師匠への恩義もある。
「学校カメラマンの職務は、家庭とは違う子どもの姿を撮影し、記録すること。写真は本人の思い出になるだけでなく、保護者にとっても大切なものです。この写真文化をつないでいきたい」
(AERA dot.編集部・米倉昭仁)
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