5時間待ちも、「中目黒のスタバ」が繰り出す仕掛け ここで生み出されたアイデアが全国の店舗に波及

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人材開発の視点でも紹介しよう。「ロースタリー 東京」にコーヒー焙煎機や焼きたてパン、バー機能があるのは、例えば焙煎技術や製パン技術を高めたい従業員にとって、ここで働くことが目標にもなる。かつて北海道の店舗で取材した従業員が、その後、自ら志望して異動してきた例も聞いた。

「常駐勤務するだけではなく、『ロースタリー 東京』の空間や焙煎、商品を深掘りしたい人は、パートナー(従業員)向けツアーに参加したりするなど、人材交流も盛んです」(菅原氏)

1900店の安定運営に欠かせない「従業員力」

スターバックスの国内店舗数は他の競合を圧倒しており、今や国内に「1901店」(2023年12月末時点)を展開する。2位のドトールコーヒーショップが「1061店」(2024年3月末)、3位のコメダ珈琲店が「968店」(同年2月末)なので、約2倍の店舗を持つ。

1900店もの店舗を安定運営させるには、従業員の現場力が欠かせない。ここまでの同社の躍進は、主に通常店舗の営業が支えてきた。

スターバックスを語る際の有名な言葉に「コーヒービジネスではなく、ピープルビジネス」がある。最近はあまり言わなくなったが、かつては「サードプレイス」(自宅でも職場や学校でもない第3の場所)という言葉を掲げ、「店で働くパートナーがスターバックスらしさを実現することでサードプレイスが生まれる」という言い方もしていた。

現在も同社が大切にする3本柱は「人(PEOPLE)」「コミュニティ(COMMUNITY)」「地球(PLANET)」で、この3つを軸にした活動を続けている。

日本の喫茶文化を考察してきた筆者は、スタバの躍進は「適度なカッコよさ」と「身近さ」の両輪だと考える。「ロースタリー 東京」はカッコよさがあるが、あまりお高くとまらない。

アメリカ発祥だが、時に日本文化をリスペクトする姿勢も持つ。前述した「落語でコーヒーを味わう」もそうだが、2019年には「スタアバックス珈琲」を期間限定で展開した。

スターバックス
スタアバックス珈琲には「プリン アラモード フラペチーノ」もあった(2019年6月、筆者撮影)

同社の従業員からよく出てくる言葉が「インスピレーション(ひらめきや啓示)」と「インスパイア(刺激や触発)」だ。「ロースタリー 東京」はその象徴でもあるのだろう。

高井 尚之 経済ジャーナリスト、経営コンサルタント

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たかい なおゆき / Naoyuki Takai

学生時代から在京スポーツ紙に連載を始める。卒業後、日本実業出版社の編集者、花王情報作成部・企画ライターを経て2004年から現職。「現象の裏にある本質を描く」をモットーに、「企業経営」「ビジネス現場とヒト」をテーマにした企画・執筆・講演多数。近著に『なぜ、人はスガキヤに行くとホッとするのか?』(プレジデント社)がある。

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