ここだけは、行列ができていることも珍しくない。席数約120という大型店舗だが、土日はもちろん満席。平日でも、午後になればほとんどが埋まってしまう。渋谷の中で、特異的に人口密度の低い「渋谷モディ」ですら、こうなのだ。
2024年4月現在、渋谷駅周辺には18軒のスタバがある(※後述)。現在、渋谷は大規模な再開発の真っ只中で、断続的に新しい商業施設のビルがオープンしている。渋谷ヒカリエから始まり、渋谷スクランブルスクエア、渋谷フクラス、一番新しいところでは渋谷サクラステージ。面白いのは、そのどのビルにもスタバがテナントとして入っていることだ。新しく商業施設ができると、スタバも増えていく。
でも、もっと驚くのは、そのどこもが(特に休日には)混雑し、行列していることだ。これだけあっても、数が足りていないのだ(逆に、だからこそ、新しい商業施設には必ずスタバが入るのかもしれない)。そういえば、4月にリニューアルオープンしたTSUTAYAにも、大型のスタバが入った。
こうした現象は、スタバだけでなく、他のカフェチェーンにも言えることだ。ドトールやタリーズなど、休日では本当にどこも行列している。明らかに、カフェの数が足りていない。
「街で時間を潰す」意識が無くなってきた
しかし、その理由はなんなのだろうか。これには色々な要因が考えられる。「東京一極集中」という言葉があるように、そもそも都心に人が多すぎる問題。歴史を遡ってみても、特に東京は、その都市のサイズの割に、人口が多い街だとされてきた。これは、人間側の問題であろう。
一方、私がここで考えてみたいのは、「都市」側の問題である。具体的にいうと、「都市の中で、“何もしなくていい滞留空間”が減少したこと」に、「渋谷のカフェ混みすぎ問題」の理由の1つを探ってみたいのだ。
ここから詳しく説明するが、かつては街の中をぶらぶらみて回ったり、あるいはそこに居座ったりすることができたが、現代ではそうした機会が失われつつあるのではないか、という仮説だ。
とても簡単に言えば、「ちょっと時間を潰す」ことが、今の都市では難しいのではないか、ということだ。
実際、私のことを思い返してみても、待ち合わせ時間まで少し時間が空いたときに、「よし、街をぶらぶらしようか」とか、「ちょっとそこらへんの店に入ろうか」とか、「その辺りのベンチに座ろうか」という気分にならず、無意識で「カフェに行くか」ということを選んでいる。
私たちの選択肢の中から、「街で時間を潰す」ということの存在感が薄れてしまっているように思えるのだ。
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