横浜創英「働き方・学び方」改革の行方、新校長「18歳頂点」学力からの脱却に本気 工藤勇一校長退任も、学校の方向性は変わらず

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確かに、日本の子どもたちは高校卒業時の学力はトップレベルだが、大学に入ってから勉強をしなくなり、海外に抜かれるといわれています。それは大学受験をゴールにした今の教育システムの結果だとすれば、その構造を変えなければ、日本は大きく変わる時代の波に飲み込まれて衰退していくだけでしょう。

「昭和や平成の初めであれば、受験勉強を頑張って一流大学に入り、定年まで一流企業で働く選択は合理的であったかもしれません。しかし、年功序列社会が崩壊し、定年まで1つの企業で勤めることが困難な時代になっています。近い将来、今ある企業の多くは形を変えていくでしょう。自分の強みやとがりを生かして起業をし、転職を繰り返す時代では、多様な仕事に転化できるスキルとマインドを身に付けることが不可欠です。

人口が多い時代であれば、儲かっている企業の真似をしていればよかった。でも、今の時代は真似事ではなく、人が誰もやっていないことを考え、実行する力がないと社会を生き抜くことはできません。社会に出てから人は、自分の弱みではなく強みで勝負していかなければなりません。生徒自身が自分の強みやとがりがどこにあるのか。それをこの横浜創英で発見できるカリキュラムを、現場の先生方と一緒に構築してきました」(本間氏)

学校改革を進めるために、最初に手をつけたのが教員の働き方改革

学校改革の本丸は学び方の改革です。しかし、改革を進めるには、教員のマインドを変えていく必要がありました。そのために、工藤氏が示す最上位の目的を教員全員に徹底することはもちろんのこと、まず工藤氏とともに取り組んだのが、教員の時間にゆとりをつくることでした。

具体的には、教員の完全週休2日制を徹底し、全員出勤日以外はシフト制に。土曜日は授業や部活があるため、午後の部活は勤務時間に組み込み、日曜に部活で出勤すれば、必ず代休を取ることとしました。勤務終了時間は16時30分。ひと月の残業が労基法に触れる45時間を超えないように、勤怠管理のシステムも導入しました。

また職員会議の無駄を洗い出し、伝達事項はすべて資料で共有し、新しい提案や話し合いが必要な案件だけを会議にかけることにしました。これによって毎月2時間かけていた職員会議が15分で終わるようになったのです。さらに、委員会や分掌も大幅に削減しました。

ちょうどコロナの緊急事態宣言下だったこともあり、授業のオンライン化が急速に定着し、それによって生まれた余白の時間の価値を教員自身が感じたということも後押ししたのでしょう。わずか1年で、働き方改革を進めることができたのです。

こうした改革の結果、今では18時には職員室に残っている教員はいません。しかも、働き方改革を進めたところ、いない職員のフォローをし合うなど、互いを支え合う穏やかな空気が自然と醸成されていったそうです。

世間では、教員の激務が問題となっていますが、本間氏自身も、それまでは職務に追われて、学校以外の世界を知る機会がなかなか持てなかったそうです。しかし、先生が社会とつながっていなかったら、生徒を社会とつなげることなど不可能です。

「自分自身も時間の余裕ができたことで、長い教員人生で初めて学校以外の世界の人たちともつながるようになり、世界が広がった」と本間氏。

学校が生徒の未来の希望を作る場所であるためには、教員も希望に満ちていなくてはなりません。組織的な働き方改革は、それ自体が目的ではなく教育改革を進めるための手段だと力説します。

いよいよ本丸の教育課程に手をつける

工藤前校長のリーダーシップもあり、この4年間で、かなりドラスティックに学校改革を進めてきたように見受けられますが、それでもまだ教科学力中心で、学びの転換を軸にしたものになっていないようです。

「日本の中等教育で連綿と続いてきた大学受験をゴールにした広く浅い教育から脱却して、自分の強みやとがりを、この創英で発見できるカリキュラムを作らなくてはならない」という工藤氏からの投げかけは構想が大きすぎて、簡単には「できる」と言えなかったという本間氏。

それでも考えれば光は見えるはずと、工藤氏が教育改革に手をつけた年に入学した生徒が高校1年生になる2025年度に向けて、ミドルエイジを中心とした学び方改革PT (12名)を立ち上げ、学習指導要領を読み解きながらいよいよ本丸の教育課程に手をつけていったのです。改革の柱は次の3つでした。

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