「団地再生」の成功事例を深掘りして見えたこと 子育て世帯の「入居続々」大阪・茶山台団地

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何か大きな変化があったのだろうか、と考え、思い当たったのが、この5年に起こった大きな出来事、コロナ禍だ。

たとえば「やまわけキッチン」では、コロナ禍を契機に団地に住む希望者にお弁当やお総菜を届け、それを通じて定期的な独居高齢者との交流を確保し、体調を確認するなどの取り組みを行ったという。

コロナ禍を経て強まったコミュニティー

コロナ禍は大きな社会的混乱、人と人とのつながりを分断するような出来事だったが、茶山台団地ではそれを乗り越え、より強固なコミュニティー形成につなげたのだろう。

茶山台団地には、団地再生を自分事としてとらえる入居者や地域の人々の努力がある。

そのうえで思うのだ。このようなコミュニティー形成による団地再生のかたちを全国津々浦々に広めようとするのは至難の業だろう、と。コミュニティー形成は人づくり、人の参加が不可欠であり、大変根気の要る事業だからだ。

茶臼山団地
茶山台団地(写真:筆者撮影)

また、茶山台団地における団地再生が一定の成果をあげているのは、一大人口集積地である大阪府にあり、かつ交通などの利便性があるという恵まれた地理的条件があることも忘れてはならない。

どんなに仕掛けを作り、コミュニティー形成に力を入れても再生が難しい団地や地域がある。それは大阪府住宅供給公社のほかの団地において、茶山台団地のノウハウを平行展開しきれておらず、それぞれで試行錯誤的な再生チャレンジを行っていることからもうかがえる。

それぞれが置かれる状況や課題がそれぞれに異なるため、団地や地域の再生は大変難しいケースが多い。とはいえ、この困難を極めた5年間を乗り越えた茶山台団地の経験と成功事例は大変貴重であり、より多くの方々に知ってもらいたい。

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田中 直輝 住生活ジャーナリスト

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たなか なおき / Naoki Tanaka

早稲田大学教育学部を卒業後、海外17カ国を一人旅。その後、約10年間にわたって住宅業界専門紙・住宅産業新聞社で主に大手ハウスメーカーを担当し、取材活動を行う。現在は、「住生活ジャーナリスト」として戸建てをはじめ、不動産業界も含め広く住宅の世界を探求。

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