日本では中国人エンジニアを排除しようとする動きが一部であるのも事実だ。2019年には大澤昇平・東京大学大学院特任准教授(当時)が、自身が経営するAI関連会社について「弊社Daisyでは中国人は採用しません」「そもそも中国人って時点で面接に呼びません。書類で落とします」などツイッター(当時、現在はX)上で投稿し炎上。その後、東大に懲戒解雇される事態に発展した。
悪条件は日本語の壁、中国への警戒感にとどまらない。郭氏は「日本企業はエンジニアの給与水準が低すぎる」と指摘する。前職のバイトダンスでは5、6年前の時点で、iOSアプリを開発するような上級エンジニアの基本給は約2500万円だったという。これとは別にストックオプションがつくのが一般的なので、日本企業との差はさらに大きくなる。
日本では、高度人材獲得へ向けた受け入れ体制の整備はまだ緒に就いたばかりだ。そういった意味では、日本でAI業界を盛り上げるためには、短期的にはより多くの日本人エンジニアを育成する方が近道かもしれないと郭氏は話す。東大や東京工業大、東北大といった教育機関の水準は十分に高いためだ。
日本の状況を踏まえてアプリ開発
日本がAI業界を盛り上げていく上での優位性について、郭氏は「条件が熟した市場が存在すること」を挙げる。コロナがきっかけでデジタル化に向けたシフトが明確になり、この動きは相当長く続く上、マーケットもあるとみる。決めるのは遅いが、一度 決めたらその方向を推し進めるという日本の特性が現れているとの見立てだ。
さらには、中国市場に事実上入れなくなったことで、海外のAI関連アプリ企業にとって日本は無視できない第2もしくは第3の市場とみなされるようになっていると指摘する。
こうした日本の状況を踏まえ、郭氏は長期的にはAIに基づいた「感情伙伴(情緒パートナー)」のアプリを開発する予定なのだという。
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