日経平均が最高値を更新するための「2つの条件」 日銀は緩和的な政策を継続する可能性が高い

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今後、株価がこの予想よりも上振れるとしたら、どんな要因があるだろうか。現時点で金融市場が織り込んでいなそうなものといえば、以下の2つがある。

まずはFRB(アメリカ連邦準備制度理事会)の利下げである。インフレ率が緩慢ながらも低下基調にある現状、「年内利下げ開始」という緩い条件ならば、かなりの確度で織り込まれている。だが、次回(4月30日~5月1日)後の「6月(11~12日)実施」となると、市場参加者は半信半疑である。

その点、ジェローム・パウエル議長が「1月のインフレ指標はかなり高かったが、季節的な影響があったと考えられる」「1月と2月分のインフレ指標を併せて考えても(インフレ率が低下していくという)全体像は変わらない」(括弧内は筆者)として、足元のインフレ再加速の兆候を大きく取り扱わない姿勢を示したことは、重要な意味を持つかもしれない。

アメリカの利下げと日本企業の変革が今後のカギ

このパウエル議長の発言には、インフレ率が2%付近まで低下していくことを最後まで見届ける必要はない、という含意があるように思える。そうであれば、6月に利下げ開始があってもさほど不思議ではない。仮に6月以降、四半期に一度のペースで利下げが進むことになれば、アメリカでは金利低下と株高の展開が想起される。

その場合の日本株はどうか。円安は一服するものの、世界的な株高の中でやはり上値を追う展開になるのではないか。

ここでのもう1つのポイントは日本企業の変革だろう。2023年の本決算発表時に、企業が東京証券取引所の資本効率改善要請に応える形で株主還元策を強化したのは記憶に新しいところだが、中にはじっくり対応を協議していた企業も多いと考えられ、企業が2024年の本決算発表時に大規模な株主還元策(自己株買い・増配)を実施する可能性もある。

もちろん、手元流動性が潤沢だからといって、その資金を自己株買いに回す対応策をめぐっては「その場しのぎ」との批判もある。だが、それでも株主から見れば、資本をため込むよりもはるかによい動きと言えるだろう。

今年も資本効率改善策が、投資家を満足させる可能性は相応に高いとみている。もっとも、これらが「逆」に出れば、株価は3万8000円を下抜ける可能性がある。FRBの利下げが遅れたり、日本企業の変革が停滞したりすれば、投資家の失望を誘うおそれがある。

(当記事は「会社四季報オンライン」にも掲載しています)

藤代 宏一 第一生命経済研究所 主席エコノミスト

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ふじしろ こういち / Koichi Fujishiro

2005年第一生命保険入社。2010年内閣府経済財政分析担当へ出向し、2年間『経済財政白書』の執筆や、月例経済報告の作成を担当。その後、第一生命保険より転籍。2018年参議院予算委員会調査室客員調査員を兼務。2015年4月主任エコノミスト、2023年4月から現職。早稲田大学大学院経営管理研究科修了(MBA、ファイナンス専修)、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)。担当は金融市場全般。

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