日経平均が最高値を更新するための「2つの条件」 日銀は緩和的な政策を継続する可能性が高い

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2023年春闘ではベアが2.1%程度であったことを踏まえると、2024年は飛躍的な伸びであり、多くのエコノミスト(おそらく日銀も)が夢のような数値であると認識していた、3%超の賃上げ率が示された形だ。仮に3.6%の賃上げが日本全体で実現した場合、日銀は今後、かなり高い確率で政策金利を連続的に引き上げる公算が大きい。

しかしながら、春闘賃上げ率はあくまで個別の労働組合と会社の賃金交渉であることをあらためて認識する必要がある。というのも、労働組合のない小さな企業や新興企業ではそもそも春闘がないため、春闘の結果が必ずしも日本全体の賃金動向を映じているとはいえない側面がある。換言すれば、春闘の結果は一部の業績が好調な大企業の賃上げによって全体の強さが誇張されている可能性があるということだ。

では、日本全体の賃金動向を把握するためには、どの経済指標が重要になるかといえば、それは厚生労働省が発表する毎月勤労統計である。これは日本で最も代表的な1人当たりの賃金を捕捉する指標で、基調的な賃金上昇率を把握する際に最も重視されている。

ここで、毎月勤労統計の数値を確認すると、2023年度入り後は基本給に相当する概念である所定内給与の伸びが1%台後半~2%付近で推移している。約30年ぶりの伸び率とはいえ、2023年春闘賃上げ率(ベア相当部分の2.1%)よりもやや低い数値となっている。

なぜ日銀は緩和的な金融政策を続けると言えるのか

また、残業代や賞与・一時金を含めた現金給与総額で見ると、2023年度入り後の平均値は1%台前半と加速感に乏しいが続いている。ここからは(1)労働組合のない中小企業の賃上げは控えめである、(2)春闘で高い賃上げを約束した企業も、実際は総人件費を抑制するために残業代や賞与・一時金を減らした可能性が浮かび上がる。

理由はともかく、実際の給与は春闘の賃上げ率ほど上昇していない可能性が高い。したがって、2024年度入り後の(毎月勤労統計で示される)賃上げ率は春闘の結果ほど強くならないと想定され、日銀の利上げは控えめになると考えられる。

これらを踏まえ、筆者は日銀が10月に政策金利(無担保コール翌日物)を0.25%に引き上げるのではないかと予想している。この見方が正しければ、株式市場では日銀の緩和的な金融政策は続くとの安心感が広がるだろう。今後の日経平均株価の中心的なレンジは3万8000~4万1000円になるのではないか。

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