Vision Proは、現在の価格設定では決してiPhoneのようなマス向けのメインストリーム製品になることはない。しかし、数年後にそうしたメインストリーム製品を生み出すための土壌づくりとして重要な役割をはたしている。
これまでのAR(拡張現実)/VR(仮想現実)のゴーグルは各社各様で開発し、その上で開発者が独自の方法でアプリを開発して提供していた。対してVision Proがやろうとしているのが、ARコンテンツの品質の向上だ。
アプリ開発のデザインガイドラインも充実
アップルがコストをかけて最新の技術を凝縮して作ったVision Proは、それまでの同類製品と比べて価格が高価な分、圧倒的に精度が高く体験の質が高いことも魅力だが、質の高い体験を提供するにはアプリをどのように設計すればいいかのデザインガイドラインなど開発者向け資料も充実している。
iPodの前にもデジタル音楽プレイヤーはたくさんあり、iPhoneの前にもスマートフォンはたくさんあったが、これらの製品が大成功したのは質の高い体験を提供したからだった(特にiPodを出したときは、まだアップルのブランド力は今ほど高くなかった)。
アップルが今後、より安価な空間コンピューティング機器を出したとしてもしばらくはiPhoneに匹敵するほど利用頻度が高くなることはないだろう。そのことは発売直後、Vision Proを被って色々なことに挑戦してSNSを騒がせたインフルエンサーらの投稿が3月に入ってすっかり落ち着いたことからもうかがえる。
ただ、少し過剰品質とも言えるVision Proを今出しておくことで、数年後、もっと手頃な価格で同様の製品が作れるようになった頃には、「このアプリがあるから空間コンピューティングを使いたい」と思わせるアプリを充実させることができる。今はまさにその土壌づくりをしているところだ。
筆者は個人的には医療や建築分野での活用や新しい形のエンターテインメントの登場に期待している。
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