大統領選「5勝」のプーチンが乗り出す世界戦略 西側と決別、12年かけ「軍事国家」の完成目指す

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軍事政権はロシアやイランと軍事協定を結ぶ可能性があるとみられている。ロシアは、侵攻に関して多くが中立的立場を保っている新興・途上国群(グローバルサウス)とも友好的な関係を維持している。

これに対して、アメリカの外交は明らかにロシアに後れを取っている。ウクライナのほかに、ガザでのイスラエルによる非人道的攻撃への対策に毎日、追われているのが現状だ。

ロシア外交に後れを取るアメリカ

アフリカ諸国などの取り込みに戦略的に動いているロシアと比べた場合、その差は残念ながら歴然としている。

では、このプーチン政権の「ウクライナ戦勝プラス反西側国家建設」戦略に対し、民主主義国家側はどう対抗すべきなのか。

結局のところ、まずは目の前のウクライナの戦場でロシアを敗北に追い込むしかない。第2次チェチェン戦争での勝利を背景に生まれたプーチン政権は、2014年のクリミア併合も含め「戦勝」の実績を国民に誇示して、政権の求心力を維持してきた。

今回の大統領選での記録的勝利の背景にも、ウクライナの反攻作戦を食い止めたという軍事的実績があった。

だからこそ、今後ロシアがウクライナで事実上の敗北を喫する事態となれば、「ロシアを率いることができるのはプーチンだけ」との長年のロシア国内でのイメージが崩れるのは間違いないだろう。

それなれば、政権が動揺し、結果的に反西側国家建設という野望実現も難しくなるだろう。その意味でウクライナ侵攻は、ロシアとウクライナとの戦争ではなく、西側全体にとって重大な分かれ目となる脅威なのだ。

吉田 成之 新聞通信調査会理事、共同通信ロシア・東欧ファイル編集長

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よしだ しげゆき / Shigeyuki Yoshida

1953年、東京生まれ。東京外国語大学ロシア語学科卒。1986年から1年間、サンクトペテルブルク大学に留学。1988~92年まで共同通信モスクワ支局。その後ワシントン支局を経て、1998年から2002年までモスクワ支局長。外信部長、共同通信常務理事などを経て現職。最初のモスクワ勤務でソ連崩壊に立ち会う。ワシントンでは米朝の核交渉を取材。2回目のモスクワではプーチン大統領誕生を取材。この間、「ソ連が計画経済制度を停止」「戦略核削減交渉(START)で米ソが基本合意」「ソ連が大統領制導入へ」「米が弾道弾迎撃ミサイル(ABM)制限条約からの脱退方針をロシアに表明」などの国際的スクープを書いた。

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