大統領選「5勝」のプーチンが乗り出す世界戦略 西側と決別、12年かけ「軍事国家」の完成目指す

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そのため、プーチン氏としては、今後は戦場での指揮経験もあり、大統領に忠誠心がある軍出身者を、積極的に登用していく構えだとみる。

この地方指導者への軍人登用は、動き出すとしても数年以上先の話だろうが、プーチン氏としてはこれによって、ロシアの軍事国家化と強権化を強める戦略だろう。

キリエンコ氏と言えば、先述したように、プーチン氏にとって最大の政策立案者であり知恵者だ。しかし、今回の大統領選の過程で、プーチン氏は彼の戦略をひっくり返したと言われる。

プーチン氏の元スピーチ・ライターで大統領府内の実情に詳しい政治アナリスト、アッバス・ガリャモフ氏などによると、その顛末は以下のようだった。

側近らの政策遂行に驚いたプーチン

2023年後半、プーチン氏はウクライナ戦争や外交にかかり切りになっていた。ウクライナの反攻作戦が止まったのを受け、キリエンコ氏に任せていた内政を点検してみて、プーチン氏は驚いた。

戦争反対を表明していたボリス・ナデジディン元下院議員が多くの支持を集め、大統領選候補となりそうな状況が生まれていたからだ。また北極圏の刑務所に収監されていた反政権派指導者アレクセイ・ナワリヌイ氏を出国させるため、米欧との間で囚人交換の交渉が進んでいたことも知って怒ったという。

キリエンコ氏は西側からのロシア批判を和らげるため、政権ナンバー2であるニコライ・パトルシェフ安全保障会議書記の反対を押し切って、こうした動きを進めていた。

結果的にナデジディン氏の候補者登録も、ナワリヌイ氏の出国も、プーチン氏が反対し、見送られた。プーチン氏は一時、ナワリヌイ氏の出国を許すことも検討したが、結局殺害することを命じたという。

かつてプーチン政権は、強権的政治を進める一方で、反政権派のデモや独立系メディアの存在を容認するなど、部分的に西側的な民主主義風の政策も取り入れる「ハイブリッド民主主義」を進めて、米欧からの批判を交わしてきた。

しかし、西側の政治的価値観を一切拒絶する国家建設に踏み出したプーチン氏には、もはや西側の反応など気にする必要はなくなったのだ。

だからこそ大統領選が近づき、ナワリヌイ氏の処遇に国際的関心が集まっていたこの時期にその殺害を命じるという、米欧への挑発とも言える行動に出たのだ。

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