私が出会った明け渡し訴訟の相手方の高齢者は、タイミングを逸して転居できなかった人たちが非常に多いです。
60代でまだ仕事をしていれば、家賃保証会社の加入だけで部屋は借りられます。ところが70歳を超えてしまうと、高齢者に部屋を貸したくない家主側は、滞納の心配というより亡くなった後の手続きをしてくれる身内の連帯保証人を条件とします。身内はいるでしょうが、頼れる関係ではないのでしょう。
部屋探しは諦めるしかない?
高齢になれば、兄弟姉妹も高齢なので連帯保証人になれるほどの経済力がありません。そうなると子どもか甥・姪になりますが、そもそも疎遠で交流がないのが大半です。
そのような背景があるので、身内の連帯保証人を求められてしまうと、この段階でほとんどの人が撃沈。1つめのハードルを越えられず、部屋探しは諦めるしかなくなってしまいます。
また高齢になると日々の生活で精一杯で、先のことを考えて行動できないようです。
見たくないのか、自分の収入もいつか減るということをなかなか想像しません。その時のために、あらかじめ安い物件に引っ越そうとせず、問題を先延ばしにしてしまいます。
さらに今より安く狭い物件に引っ越すためには、当然、荷物も断捨離していかねばなりません。これが2つめのハードルです。
元気そうに見えても、年を取ると荷物の処分を自分ではできません。誰かの手を借りなければ、断捨離や部屋の片づけは難しくなります。
結果、安い物件に引っ越すことができず、トラブルに発展してしまう高齢者は後を絶ちません。
家主側が一度こういったトラブルを経験してしまうと、次から高齢者には貸さないと決めるのは当然の帰結です。結果、高齢者がますます借りられない世の中になっていきます。「貸さない家主が悪い」とは、誰も言えないのです。
私は今も毎週のように裁判所に通い、複数の賃貸トラブルを解決するために走り回っています。すべて紹介することはできませんが、他にもこのような事例があるということを知っていただければと思います。
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