「人外」との婚姻譚、そこに刻印された社会の姿 『ツレが「ひと」ではなかった』書評

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『ツレが「ひと」ではなかった 異類婚姻譚案内』川森博司 著
ツレが「ひと」ではなかった 異類婚姻譚案内(川森博司 著/淡交社/2310円/224ページ)
[著者プロフィル]川森博司(かわもり・ひろし)/神戸女子大学文学部史学科教授。1957年生まれ。大阪大学卒業、大阪大学大学院博士後期課程中途退学。97年大阪大学で博士(文学)の学位を取得。専攻は、民俗学・文化人類学。

漫画やアニメでは今や異世界転生はありふれた主題だ。異世界の者と恋愛や結婚をする物語も多い。とはいえ、人外の者との結婚は決して最近の発明ではない。「鶴の恩返し」「浦島太郎」「一寸法師」──。皆が知る昔話にも、動物や異界の者など異類との婚姻が描かれているではないか。本書の主題はそんな「異類婚姻譚(たん)」である。

昔話に刻印された社会観

異類との結婚は、科学づいた現代ならずとも荒唐無稽な物語かもしれない。しかし、人々が想像力を巡らし、語り継ぐに当たって、物語にはその社会が刻印されているに違いない。そう著者はいう。

例えば、「鶴の恩返し」では、主人公が財をなすのを美しい女性に姿を変えた鶴が助けるが、正体を知られると飛び去ってしまう。このように異類の女がやってきて結婚生活を送るが去っていくという「異類女房譚」の構成は日本特有なのだという。

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