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〈今週のもう1冊〉『NEXUS 情報の人類史』書評/行為主体となったAIが民主社会を内側から掘り崩す恐れ

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『NEXUS(ネクサス) 情報の人類史』ユヴァル・ノア・ハラリ 著
NEXUS(ネクサス) 情報の人類史〈上:人間のネットワーク/下:AI革命〉(ユヴァル・ノア・ハラリ 著/柴田裕之 訳/河出書房新社/(上)2200円(下)2200円/(上)304ページ(下)328ページ)
[著者プロフィル]Yuval Noah Harari/イスラエルの歴史学者、哲学者。1976年生まれ。英オックスフォード大学で中世史、軍事史を専攻し2002年に博士号取得。イスラエルのヘブライ大学で歴史学を教える一方、世界の著名なメディアへ寄稿するなど発信を続ける。

『サピエンス全史』で知られる歴史学者の新著は、情報が人類社会をいかに形作ってきたかを再定義する壮大な試みだ。一種の虚構(物語)である宗教や国家、法制や貨幣は、いずれも情報ネットワークとして機能し、大規模な人々の協力を可能にしてきたと指摘する。そして現在、情報ネットワークの中枢にAIが入り込むことで、人類はどこに向かうのか。

AIは民主社会を内側から壊せる

AIは計算や記憶のためだけの装置ではない。言語を操り、物語を生み、意思決定を補助し、今やそれらを代行する行為主体でもある。「物語」と共に人類社会を動かしてきたのは「官僚制」だが、AIはその両方を一気に引き受ける。物語性と合理性という人間社会の2大原理を、かつてない規模と速度でAIが担いつつあるのだ。

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