老舗酒造メーカーが「ストロング系」に込めた思い コスパのよさが「心の拠り所」となる人もいる

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私の実家は酒屋だった。東京では角打ちと言うが、(出身の)北海道では「もっきり」というものがある。私の原体験として小学生の頃、近くに2つ大きなゴム工場があった。

にしなが ゆうじ●1965年生まれ。1988年に合同酒精(現オエノンホールディングス)入社。2007年に合同酒精執行役員。2010年にオエノンHD、合同酒精取締役。2015年からオエノンHD代表取締役社長。2016年から合同酒精代表取締役社長(撮影:ヒダキトモコ)

そこの方々が、工場のお風呂に入ったあとに家に帰ればいいものを、うちに寄って一杯ひっかけてから帰る。皆さん、すごくおいしそうに飲む。焼酎をなみなみとついで、さらに梅シロップを上にかけて、1日の疲れをうちで癒やす。この一杯のお酒で心が救われるじゃないけれど。

そういうのを毎日のように見て、お酒っていろいろと言われる部分はあるにせよ、人を救っている面も多分にあるんじゃないの?という。これが私の原点。だから、そういう方々に喜んでいただくお酒を提供したいとの思いがある。中身もさることながら、価格もできる限りリーズナブルにご提供できればいいかなと思う。

休肝日を作れば9%も問題ない?

──ストロング系は9%だが、ウイスキーや焼酎はもっと度数が高い。

その通りだ。要するに缶チューハイは1本飲み切りと判断されている。キャップ付きなら何回かに分けて飲み、20グラム未満に抑えられることもあるが、プルキャップだとそうはいかない。だったら2人で飲むとかいろいろなやり方があるのに、1人で1本飲みきることだけが想定されている。

──度数8%以上の缶チューハイだと、ガイドラインの1日アルコール量20グラム以上に抵触するから問題があるということでしょうか?

他社の動向もあるが、ガイドラインで健康被害が明らかになっているにもかかわらず発売を続けるか否かについては考える必要がある。

飲酒については個人の裁量や判断も大きい。ガイドラインは1週間の摂取量を想定しており、9%を飲んだ翌日が休肝日なら2日間で4.5%と単純計算できる。飲酒ペースを毎日から2日に1回、3日に2回とか、そういうやり方で純アルコール量を超えないよう個人が判断して飲むようになるかもしれない。

そう考えるとストロング系だけをやり玉に挙げるのは、ちょっと乱暴かなと個人的には思う。

次ページストロング系が消えたら、酒類業界はどうなる?
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