ネット広告を荒らす「悪意」に社会は勝てるのか 広告市場は過去最高でもメディアが暗い理由
これまでのネット広告で広告主が問題にしてきたのは、極端に政治的に偏ったコンテンツや、怪しいビジネスを呼びかけるページに広告が掲載されるとブランドが毀損されることだった。あるいは、広告のカウント数を水増しするページは「アドフラウド(広告詐欺)」と呼ばれ問題視された。
ところがMFAにはそんなあからさまな問題は見つけにくい。広告が多すぎるだけで、ブランドセーフティを危うくするとは言いがたい。だがやはり真っ当なメディアビジネスの場ではなく、質の低いコンテンツで広告収入を言わば収奪するためのサイトなのだ。社会的に許されるものではない。
しかも、昨年あたりからはコンテンツをAIで安易に生成するMFAが出てきて加速度的に数が増えてきた。あっという間に世界の広告市場で問題になった。
またSNSも油断のならない場になってきた。Facebookではお友達の楽しい投稿の次に、著名人の名前と写真を使った投資商品の広告が平気で流れてくる。世界的アニメ作家が投資を呼びかけるはずがない。ベテランジャーナリストが金融商品の広告をするわけがない。誰がどう見ても詐欺広告なのに、いっこうになくならないのだ。運営会社のMetaは2022年の業績悪化から一転、2023年は高収益を上げたが、詐欺広告によるV字回復かと疑いたくなる。
画面が広告だらけでどれが記事かわからない
だがもっと問題だと私が感じているのは、真っ当な媒体社であるはずの新聞社や出版社が運営するデジタルメディアで、広告が溢れかえるほど表示されることだ。アドフラウドならぬアドフラッド、広告の洪水だ。
記事を読もうにも、画面が広告だらけでどれが記事かわからない。ページをめくるとまず全面に広告が表示され、×ボタンを探して閉じないと次のページに行けない。記事を読んでほしいのか? 広告を見せればそれでいいのか? まともな媒体社なら前者のはずだが、後者としか思えない。これではMFAと大して変わらないではないか。そう言いたくなるメディアが増えている。前は普通に読んでいたメディアなのに、広告洪水で萎えてもう二度と開きたくなくなっている。
最新の日本の広告費を見て、その背景がわかった。MFAや詐欺まがいの広告に押されて、真っ当なはずのメディアも一線を超えようとしている。メディアの矜持をかなぐり捨ててでもMFAまがいに広告を大量に表示しないと売り上げが追いつかないのではないか。広告洪水は、そんなメディアの悲鳴と受け止めた。
このままでは、メディアの崩壊が待っているだけではないか。この「悪意の汚染」を止めることはできないのだろうか。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら