トヨタ出身者が起業「Lean Mobility」の正体 i-ROADを手掛けた人物による超小型EVメーカー

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これには理由がある。独創的な後輪操舵から一般的な前輪操舵に転換するとともに、狭いと言われていた後席を広くしたためだ。

前後タンデムで乗車する室内。乗用車と同じ3点式シートベルトを装備する(筆者撮影)
前後タンデムで乗車する室内。乗用車と同じ3点式シートベルトを装備する(筆者撮影)

後輪操舵のi-ROADは、コーナーを曲がるたび、リアがドリフトするように外に張り出しながら曲がっていく。筆者はこの感覚は新鮮だと思っていたが、壁に寄せて止めた場合、出発時にリアが外に張り出すので、壁に当てる心配があった。

たしかに、後輪操舵のおかげで、i-ROADの最小回転半径はわずか3mだったが、他の自動車や2輪車との操縦感覚の違いに、戸惑う人もいただろう。谷中氏もその点を考えて、前輪操舵にしたそうだ。その結果、最小回転半径は3.6mになった。

操作性は乗用車とほぼ同じ。エアコンやカップホルダーなど、快適性や機能性も追求されている(筆者撮影)
操作性は乗用車とほぼ同じ。エアコンやカップホルダーなど、快適性や機能性も追求されている(筆者撮影)

バッテリー容量が拡大したことも特徴で、満充電での航続距離はWLTCモードで100kmと、30km/h定速走行で50kmだったi-ROADから大幅に伸びた。充電時間はAC100Vで約7時間、AC200Vで約5時間とのことだ(Lean3のデータは開発中のため暫定値)。

他にi-ROADとの違いとしては、ドアが“左側にしかない”ことがある。右側通行の国向けも左のみとするそうで、谷中氏は「2輪車のサイドスタンドは通行の左右にかかわらず左側にある」ことを理由に挙げた。

個人的には、エアコンが装備されたことが嬉しい。暑さ寒さはもちろん、i-ROADでは雨天時に熱線入りのフロント以外の窓が曇りがちだったが、Lean3ではそのような苦労はしなくてすみそうだ。

前輪操舵への転換で変わったデザイン

デザインは、フィアロのデザインディレクター、平田滋男氏が担当。前輪操舵になったために、フェンダーをボディから独立させたi-ROADのような構造はできない中で、リーンしたときにもフェンダーとタイヤの隙間が狭く見えるよう、前輪がストロークしたときにフェンダーの中に入るよう、工夫したという。

左がCEOの谷中壯弘氏、右がデザインを手掛けた平田滋男氏(筆者撮影)
左がCEOの谷中壯弘氏、右がデザインを手掛けた平田滋男氏(写真:Lean Mobility)

ヘッドランプは法規的には2眼でも問題ないが、顔が平面になるので単眼としている。ボディサイドは、背が高くなったことで腰高に見えることを抑え、伸びやかで動きのある造形に。リアで目につく上部の黒いルーバーの中には、エアコンのコンデンサーが内蔵されている。

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