ペンタックス身売りで終わらない“デジカメ再編ドミノ”
号砲が放たれた。リコーは7月1日、HOYAから「ペンタックス」ブランドで展開するデジタルカメラ事業を買収すると発表した。HOYAがデジカメ事業を切り離して設立する新会社を、10月1日をメドに完全子会社化する。ペンタックスブランドは維持する考えだ。買収額は未公表である。
業界12位のリコーと11位のペンタックス。両社合わせても年間のデジカメ販売が200万台程度と、「最後尾集団」は変わらない。ただ、小粒とはいえ、今回の買収は波紋を広げそうだ。価格競争に苦しむ下位メーカーの再編を促す可能性がある。
「バトンタッチできて、ほっとしている」。記者会見で、HOYAの鈴木洋CEOはこう語った。HOYAが2007年にペンタックスを買収したのは、内視鏡事業の獲得が目的。デジカメ事業は赤字続きで、本体業績の足かせだった。そのため、早い段階から売却先を模索していた。
鈴木CEOにリコーの近藤史朗社長が面会したのは、今から2年前。「このとき、(ペンタックスが今夏発売予定の)ミラーレスデジカメの企画を聞いた」と、近藤社長は明かす。初交渉の相手に、新製品開発の計画を披露するのは異例のこと。HOYA側が資金力豊富なリコーを売却先として“本命視”した会合だった、と見てよいだろう。
サムスンとは交渉決裂
ただ、HOYAは他メーカーとの交渉も続けた。09年には、韓国サムスン電子に打診したもよう。同社に対してはかつて、ペンタックスのデジカメボディを供給していた実績がある。「売却提示額は当初500億円だった。折り合いがつかずにすぐに200億円に引き下げたが、それでもサムスン側は『高い』と判断したようだ」(関係筋)。