北米で快進撃「ゴジラ-1.0」ヒットの"4つのカギ" TOHO Global社長の植田浩史氏にインタビュー
その立ち上げを指揮した植田氏は、別組織にすることのメリットと狙いをこう語る。
「創業90年の東宝は、国内で盤石な体制を築いている一方、海外に関してはまだまだ新参者です。そうしたなか、複雑な事情のある海外マーケットを日本から遠隔操作で動かすのは効率が悪い。
海外をこれから先の柱に据えるのであれば、現地のスタッフが機動的に動けて、日本側がしっかりと状況を把握していることが大切です。連絡を密にして、1つの組織としてガバナンスを利かせながら連携していくことを理念にスタートしました。
この先の東宝の海外事業の成長において、重要なステージに位置づけています」
そんな東宝が海外での自社配給に踏み切ったのが、『ゴジラ-1.0』の北米公開だ。現地の劇場ブッキングは、TOHO Globalの在米子会社Toho International, Inc.が担い、IMAGICAグループのPixelogicが業務をサポート。邦画実写として最大規模の2600館以上という公開館数まで拡大した。
その結果、北米興収は5641万ドル(約84億円)を少し超えたところ(2月1日で公開終了)。邦画実写としては、『子猫物語』(1329万ドル:約20億円)を大きく上回り、34年ぶりに記録を塗り替えて歴代1位に。
アジア実写映画としても、5300万ドル台の『パラサイト 半地下の家族』(ポン・ジュノ監督)や、『HERO』(チャン・イーモウ監督)を抜いて歴代1位。
外国語実写映画としては、1億2800万ドル台の米・中・台・香の合作『グリーン・デスティニー』(アン・リー監督)、5700万ドル台の『ライフ・イズ・ビューティフル』(ロベルト・ベニーニ監督)に次ぐ3位となる快進撃となった。
『ゴジラ-1.0』記録的北米ヒット4つの要因
そんな記録的北米ヒットの要因を、植田氏は4つ挙げる。
「ひとつは、ゴジラというキャラクターのファンの土壌ができあがっていたこと。高い認知度を含めて北米での下地を築いてこられた先人に感謝しなければなりません。2つ目は、山崎貴監督による作品のすばらしさ。この作品力がもっとも大きな要素です。
3つ目は、全米脚本家組合と全米映画俳優組合のストライキがあったことで、本来であればクリスマス前の有力作品が立て込む時期に作品数が少なかったこと。大作を求める劇場のニーズにうまく組み込めました。
最後の4つ目が、Toho Internationalによる自社配給です。劇場ブッキングに限らず、eコマースも含めてゴジラファンと双方向コミュニケーションを大切にしてきた歴史を活かして、戦略的にファンとのつながりを作っていきました」
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